伊藤潤二の人間失格は原作とどう違う?全3巻の構成と読む順番

伊藤潤二の人間失格は原作とどう違う?全3巻の構成と読む順番

「伊藤潤二の『人間失格』って、原作どおりなの?」
伊藤潤二の漫画版『人間失格』は小学館ビッグコミックスの全3巻・全24話で完結。筋の大枠は太宰治の原作に沿いつつ、区切り方・冒頭・太宰本人の登場・原作にない出来事が加わった作品です。この記事では原作の5部構成と漫画の24話を1枚で並べ、何が違うのか、どちらから読むかを結末に触れずに整理します。

「全何巻?」「古屋兎丸の漫画版と同じもの?」で検索の手が止まった人にも、出版社と刊行年で見分けられる表を用意しました。筆者の手元にあるのは楽天Koboで買った伊藤潤二版の全3巻と、Kindleで入手した原作。中身の感想ではなく、小学館の公式書誌と青空文庫の本文で数えた字数をもとに並べます。

PR:本記事はプロモーションを含みます。

人間失格 伊藤潤二 1巻 表紙

『人間失格』1巻(伊藤潤二版)

伊藤潤二・太宰治/小学館 ビッグコミックス。全3巻完結

Amazonで見る(Kindle版に切替可)

結論: 全3巻・全24話で完結、大枠は原作どおりで足された部分がある

伊藤潤二の『人間失格』は、小学館ビッグコミックスの全3巻・全24話で完結済み。葉蔵の半生をたどる大枠は原作に沿っていますが、原作にない場面や出来事が足された「漫画としての再構成」です。連載は「ビッグコミックオリジナル」2017年10号〜2018年9号で、単行本は2017年10月30日の1巻から2018年7月30日の3巻まで、およそ9か月で出そろいました。

では「原作に忠実」なのか。小学館の紹介文はそう書いていません。1巻の紹介は「トップホラー漫画家の伊藤潤二氏が独自の表現で捌きます」、さらに「ホラーの要素を絶妙に取り入れ、構成した」という言い回し。版元自身が、原作をそのまま絵にした作品ではなく独自の表現を加えた作品だと位置づけています。

  • 巻数全3巻(ビッグコミックス)。新装版・合本・上中下といった別の版は、小学館公式の全巻リストでは見当たりませんでした。
  • 話数全24話。各話は「第○のしがらみ」と数えられ、原作の「第○の手記」とは別の区切りです。
  • 原作との関係筋の大枠は原作どおり。そのうえで冒頭の場面、太宰治本人の登場、原作にない出来事が加わります。

ここから先は、小学館の公式書誌とビッコミ(小学館の漫画配信サイト)の作品ページ、青空文庫の原作本文を2026年10月31日に確認した内容です。

人間失格 伊藤潤二 3巻 表紙

『人間失格』3巻(完結巻)

伊藤潤二・太宰治/小学館 ビッグコミックス。2018年7月30日発売・B6判200ページ

楽天Koboで見る Amazonで見る

原作の5部と漫画の24話を並べる

原作の『人間失格』は、はしがき・第一の手記・第二の手記・第三の手記・あとがきの5部でできています。青空文庫の本文から空白とルビを除いて数えると、各部の分量は次のとおりでした。

原作の部字数(実測・概数)語り手
はしがき約1,900字名のない「私」
第一の手記約8,900字葉蔵の一人称「自分」
第二の手記約26,900字葉蔵の一人称「自分」
第三の手記約32,800字葉蔵の一人称「自分」
あとがき約2,000字名のない「私」
合計約72,500字手記3つで全体の約95%

出典: 青空文庫『人間失格』本文(底本は新潮文庫)を筆者が数えた概数。版や数え方で多少前後します。

つまり原作は、ほぼ全編が葉蔵自身の手記。前後に「私」という語り手の短い枠がついている形です。一方の漫画は、次のように3冊・24話に組み直されています。

漫画の巻発売日判型・ページストア
1巻2017年10月30日B6判・216ページ楽天Kobo/Amazon
2巻2018年3月30日B6判・200ページ楽天Kobo/Amazon
3巻(完結)2018年7月30日B6判・200ページ楽天Kobo/Amazon

出典: 小学館公式の書誌(発売日・判型・ページ数)、ビッコミの作品ページ(全24話・話タイトル)。

話は「第一のしがらみ」から始まり、第1話のタイトルは「大庭葉蔵」、続く第2話が「道化」、第3話が「人間の女性」。原作の「手記」という単位は使われず、24の短い話に刻み直されているわけです。どの話がどの巻に入っているかの振り分けは、今回の確認では公式資料で特定できませんでした。

この2つの表を見比べてわかるのは、「原作のどの手記が漫画の何巻にあたるか」を1対1で対応させる読み方はできない、ということ。原作は手記3つが約95%を占める一方、漫画は3冊のページ数がほぼ均等。区切りの位置そのものが、別の設計になっています。

違いは5つ: 区切り・冒頭・太宰本人・足された出来事・時代

原作との違いを、論点ごとに出典の確かさも添えて並べた一覧がこちら。公式や作者の発言で確かめられるものと、紹介記事など二次情報に頼るものを分けています。

論点原作伊藤潤二版出典の確かさ
区切りはしがき+手記3つ+あとがき全24話「第○のしがらみ」・3冊公式(ビッコミ・青空文庫)
冒頭「私」が3枚の写真を見た話から入る原作者を思わせる作家の場面から始まると紹介されている二次情報(複数の紹介記事)
太宰治本人登場しない作中人物として登場する公式(小学館コミックのニュース)
足された出来事なし原作にない出来事・ホラー描写が加わる作者のインタビュー発言
時代戦前〜戦中の葉蔵の半生大正〜昭和初期のまま(現代に移していない)二次情報(作品データベース)

区切り: 「手記」ではなく「しがらみ」

いちばん確かな違いはここ。原作は葉蔵の手記が3つ、漫画は「しがらみ」が24。前の節の表のとおり、話の区切り方から別物です。

冒頭: はしがきの「私」の前置きがない

原作は「私は、その男の写真を三葉、見たことがある。」という、手記を読んだ人物の前置きから始まります。漫画版について、1巻を読み比べた紹介記事などでは、この前置きの代わりに原作者を思わせる作家の場面から入り、葉蔵の幼い日の回想へ進むと紹介されています(紹介記事の記述による)。

太宰本人: 作家・太宰治が作中に出てくる

小学館コミックの公式ニュース(2018年4月20日)は、小説家・太宰治が作中人物として登場することに触れています。どの場面で出てくるかは物語の展開に関わるので、この記事では書きません。

足された出来事: 作者自身が「原作にはない事件」と語る

雑誌BRUTUSのインタビューで伊藤潤二さんは、原作にはない事件を入れたこと、太宰治の他の作品からディテールやイメージを借りたことを話しています。具体的な出来事の中身は、読んでのお楽しみ。「原作どおりか」と聞かれたら、答えは「大枠は原作どおり、細部には原作にないものがある」。

時代: 原作の時代を保ったまま

作品データベースなどの紹介では、舞台は大正から昭和初期で、原作の時代設定を保っているとされています。後で触れる古屋兎丸版が現代に置き換えているのとは対照的です。

なお、小学館の1・2巻の紹介文には主人公が「大葉葉蔵」と書かれていますが、ビッコミの第1話タイトルは原作と同じ「大庭葉蔵」。紹介文側の表記ゆれとみられ、作品の違いではありません。

出版社は小学館、同じ全3巻の古屋兎丸版とは別作品

伊藤潤二版の出版社は小学館。レーベルはビッグコミックス、連載誌はビッグコミックオリジナルです。紛らわしいのが、同じタイトルで同じく全3巻の古屋兎丸版。「人間失格 漫画 全3巻」で探すと両方が出てくるので、出版社と刊行年で見分けるのが確実です。

項目伊藤潤二版古屋兎丸版
出版社・レーベル小学館・ビッグコミックス新潮社・バンチコミックス
巻数・話数全3巻・全24話「第○のしがらみ」全3巻・全12話「第○の日記」
単行本の刊行2017〜2018年2009〜2011年
時代原作の時代のまま現代(漫画家がネット上の日記を見つける導入)

出典: 小学館・新潮社の公式書誌、Wikipedia「人間失格 (漫画)」。

筆者は古屋兎丸版を持っていないため、中身の比較やおすすめはしません。このほかにも「まんがで読破」シリーズや、森禀さんによる1冊完結の漫画化など、『人間失格』のコミカライズは複数あります。「伊藤潤二の」で探しているなら、表紙に伊藤潤二・太宰治の名前が並ぶ小学館の3冊が目的の本。

読む順番: 漫画は1→2→3、原作との順はどちらが先でもいい理由

漫画の中の順番は、1巻→2巻→3巻で迷う要素がありません。小学館公式の全巻リストに別の版は見当たらないので、3冊を巻数どおりに読めば完結まで届きます。

悩ましいのは原作との順番のほう。どちらが先でも成り立ちますが、向いている人が違います。

順番向いている人理由
原作→漫画「どこが違うか」を自分で見つけたい人原作は約7万字で、青空文庫なら無料で全文が読める。漫画には原作にない要素が入るので、筋を先に知っておくと足された部分が見分けやすい
漫画→原作原作を途中で閉じたことがある人絵で人物と時代の空気をつかんでから原作に戻る入り方。ただし漫画の場面を原作にもあると思い込まないよう、違いの表を手元に

原作で引っかかったところがある人は、なぜ難しく感じるのか、どう読み直すかを別の記事でまとめています。

関連記事: 人間失格は難しい?わからないと感じる理由と再挑戦ルート

『人間失格』の前に太宰治の短い作品から慣れたい、という道もあります。

関連記事: 太宰治はどれから読む?走れメロスから人間失格への段階ルート

筆者が持っているのはKoboの全3巻とKindleの原作

伊藤潤二版は楽天Koboで、2021年6月30日に1巻、翌7月1日に2巻と3巻を購入しました。2日で全3冊。同じ2021年の6〜7月には『うずまき』など伊藤潤二さんの他の作品もKoboでまとめて買っていて、その時期の1作です。

原作はKindleの0円版を2012年11月20日に入手したもの。著作権の保護期間が終わった作品なので、青空文庫でも無料で全文を読めます。

漫画を買う前に絵柄を確かめたいなら、ビッコミの作品ページで試し読みできる話がありました(2026年10月31日時点。公開範囲は変わることがあります)。ほかの漫画をアプリで試し読みする方法は、こちらで比べています。

関連記事: マンガアプリ 無料 読み放題を比較|ピッコマ・LINEマンガ・シーモア・ebookjapanの違い

まとめ

  • 全3巻・全24話で完結小学館ビッグコミックス。公式リストで確認できた版はこの3冊のみ。1→2→3の順で読めば終わりまで届きます。
  • 大枠は原作どおり、細部は独自区切り・冒頭・太宰本人の登場・原作にない出来事が違い。公式も「独自の表現」と位置づけています。
  • 古屋兎丸版とは別作品あちらは新潮社・現代設定。出版社名で見分けられます。
  • 原作との順はどちらからでも違いを見つけたいなら原作から、原作で止まったなら漫画から。

原作と同じ作品を、別の作り手が組み直すと何が変わるのか。同じ「原作と漫画の違い」の視点で、別の作品を整理した記事もあります。

関連記事: 左ききのエレンの原作とリメイクの違いは?全26巻完結と読む順番

伊藤潤二『人間失格』1巻をチェック

人間失格 伊藤潤二 1巻 表紙

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