人間失格は難しい?わからないと感じる理由と再挑戦ルート
「人間失格は読んでてよく分からない文章があります」。
Q&Aサイトに投稿されたこの相談、心当たりはないでしょうか。有名だから読んでみたのに、手記のどこかで迷子になる。「私に文豪は向いてないのかな」と自分を責める書き込みまであります。先に結論を言うと、わからないのはあなたの読解力のせいではありません。
この記事では、『人間失格』が難しく感じられる理由を3つに分解し、そのうえで再挑戦のルートを4つ提案します。作品の「正しい解釈」を押しつける記事ではありません。止まった場所から、もう一度読み始めるための実用的な地図です。
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結論: わからないのは読解力のせいではない
『人間失格』の難しさは、読者の能力ではなく作品の側の条件から生まれています。手記という特殊な形式、昭和初期という時代の距離、そして今は使われない語彙。この3つです。
実際、「よく分からない文章がある」という質問に対して、Q&Aサイトでは「時代背景、風俗、言葉など、何を取っても今とはかなり違いますから、そもそも解らないことがあるのが当然」という回答が付いています。当然、なのです。100年近く前の告白を注釈なしで全部わかるほうが珍しい。
だから必要なのは「もっと頑張って読む」ことではなく、形式・時代・語彙という3つの壁に合わせて、読み方の側を変えることです。その具体策があとで紹介する再挑戦ルート4つになります。
同じ場所で止まった人たち
Q&Aサイトを見ると、この本で立ち止まっているのは特定の年齢層ではありません。
- 中学生「太宰治の人間失格って中一が読むには難しいですかね…?」「中3で夏休みの宿題に読書という課題が出た」という読む前の不安の相談。
- 高校生「言い回しとか文の作りとかが難しくて読むのに苦労しましたが、おおよその内容は理解出来ました」という、苦労しつつ読み切った報告。
- 大人「読んでてよく分からない文章があります」という素朴な質問と、他の文豪作品で挫折して「私に文豪は向いてないのかなー」と落ち込む声。
年齢も読書歴もばらばらの人が、同じ壁の前で立ち止まっている。これは壁が読者側ではなく作品側に立っている証拠です。あなたが最初ではないし、最後でもありません。
難しさの正体は3つある
壁の中身を順に見ていきます。
- 1. 手記形式で筋が追いにくい物語は主人公・葉蔵の3つの手記を読む形で進みます。出来事の説明より内面の吐露が中心なので、「次に何が起きるか」で引っ張る小説を期待すると掴みどころがありません。事件を追うのではなく、長い独白を聞くつもりで読むと構えが合います。
- 2. 昭和初期の風俗が前提になっているカフェの女給、左翼運動、私娼窟。当時の読者には説明不要だった風俗が、現代の読者には注釈なしで出てきます。ここは「わからなくて当然」の代表格で、細部を飛ばしても主筋は追えます。
- 3. 語彙と言い回しが今と違う「道化」「世間」といった鍵になる言葉も、今の日常語とは重みが違います。逐一調べようとすると止まるので、電子書籍の長押し辞書で流れを切らずに補うのが現実的です。
版で読みやすさが変わる
見落とされがちですが、高校生の「言い回しとか文の作りとかが難しくて苦労した」という声には続きがあり、「出版社とかにもよると思いますが」と版の違いに触れています。これは重要な指摘です。
青空文庫系の0円版は原文がそのまま入っているだけで、注釈も解説もほぼ付いていません。一方、新潮文庫や角川文庫などの有料版には語注や巻末解説が付き、昭和初期の風俗の壁をかなり下げてくれます。0円版で雰囲気を確かめ、本格的に読むなら注釈付きの文庫版に乗り換える。この二段構えが無駄のない進み方です。
文庫の電子版はセールで安くなることが多いので、乗り換えのタイミングはセール比較の記事が参考になります。
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再挑戦ルート4つ
壁の正体がわかれば、迂回路は引けます。自分に合いそうなものをひとつ選んでください。
- ルート1: 短い太宰から入り直すいきなり頂上に登らず、30分で読める『走れメロス』や『桜桃』で太宰の語り口に慣れてから戻る方法。遠回りに見えて、いちばん確実です。段階の踏み方は別記事にまとめています。
- ルート2: 注釈付きの版に替える前の節のとおり。風俗と語彙の壁は、注釈が肩代わりしてくれます。
- ルート3: 漫画版で骨格を先に掴む人間失格(まんがで読破)のような漫画版で物語の流れを先に頭に入れてから原文へ戻ると、手記形式の掴みどころのなさが解消されます。あらすじを知ってから読んでも、この作品の価値は減りません。
- ルート4: 朗読で耳から通す文字で止まった箇所も、音の流れなら越えられます。独白体の作品は朗読との相性がよく、通勤時間がそのまま再挑戦の時間になります。
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それでも合わなければ、それでいい
4つのルートを試しても入っていけないなら、いま読む本ではなかったというだけのことです。Q&Aサイトには『人間失格』を勧めない回答者もいて、読みやすい別の作品を挙げる人もいます。名作との相性は実在します。
幸い、近代文学には入口が他にいくらでもあります。漱石・芥川・梶井など、30分の短編から長編へ段階的に登るロードマップを用意しているので、太宰以外の入口から試してみてください。
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まとめ|わからないのは、普通
『人間失格』がわからないと感じる理由は、手記形式・時代の距離・語彙の3つ。どれも読者の読解力とは無関係です。
- 壁は作品側に立っている中学生から大人まで、同じ場所で止まっています。自分を責める理由はありません。
- 読み方の側を変える短い太宰から・注釈付きの版で・漫画で骨格を先に・朗読で耳から。迂回路は4本あります。
- 合わなければ別の入口へ名作との相性は実在します。近代文学の入口は太宰だけではありません。
止まった場所は、失格の証明ではありません。ただの、次の読み方への分岐点です。
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