太宰治はどれから読む?走れメロスから人間失格への段階ルート

「太宰治の人間失格って、中一が読むには難しいですかね…?」
Q&Aサイトに実際に投稿された質問です。同じような不安は大人からも寄せられていて、「読んでてよく分からない文章がある」という声も珍しくありません。でも、これは年齢や読解力の問題ではありません。多くの場合、いちばん重い代表作から入ってしまう「順番」の問題です。

この記事では、筆者のKindleライブラリにある太宰作品5冊(走れメロス・桜桃・グッド・バイ・斜陽・人間失格)を「短く明るい話」から「長く暗い代表作」へ並べ直し、挫折しにくい4ステップのルートを提案します。5冊すべてに青空文庫系の0円版があるので、今夜30分から試せます。

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走れメロス 表紙

『走れメロス』

太宰治/青空文庫系Kindle版

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結論: 太宰治は「短く明るい話」から読む

先に答えを示します。走れメロス → 桜桃・グッド・バイ → 斜陽 → 人間失格。この順番なら、文章の短さと明るさが階段状に変わっていくので、どの段でも「前の1冊より少し重いだけ」で済みます。

Step作品読了時間の目安トーン
1走れメロス約30分明快・疾走感
2桜桃/グッド・バイ各30分前後短編・軽妙さと苦さ
3斜陽一晩〜数日中編・静かな没落
4人間失格数日代表作・重い告白体

「読む順番などない」という意見もあります。そのとおりで、どの作品も独立して読めます。それでも順番を提案するのは、Q&Aサイトの相談の多くが「有名だから人間失格から読んだ(読もうとした)」で始まっているから。入口さえ変えれば防げる挫折が、あまりに多いのです。

いきなり人間失格で挫折する理由

『人間失格』は太宰の最晩年に書かれた代表作で、主人公の手記という形式で進みます。この形式が最初の壁。出来事が時系列で説明される普通の物語と違い、語り手の内面の吐露が延々と続くため、「筋を追う読書」に慣れた目には掴みどころがありません。

加えて時代の壁もあります。昭和初期の風俗や言い回しは現代と大きく違い、Q&Aサイトでも「分からないことがあるのが当然」という回答が付いているほど。実際、高校生からは「言い回しとか文の作りとかが難しくて読むのに苦労した」という声もあります。

つまり、人間失格は「太宰の入口」ではなく「太宰の頂上」です。頂上から登る登山がないのと同じで、最初の1冊にする必然性はどこにもありません。

Step1・2: 走れメロスから短編2作へ

走れメロスは教科書でおなじみの短編。友の命を懸けた約束を果たすために走る、筋が一本道の物語です。文章は現代の目にも平易で、30分あれば読み切れる分量。「太宰は暗い」というイメージとは正反対の疾走感があり、最初の1冊としてこれ以上の候補はありません。

次の2作で、太宰らしい苦みを少しずつ足します。桜桃は子を持つ父親の独白を描く最晩年の短編。グッド・バイは複数の愛人と別れようとする男の顛末を軽妙に描いた絶筆で、未完のまま残された作品です。どちらも30分前後で読める短さなので、「短いから読み切れる」成功体験を保ったまま、作風の幅に触れられます。

筆者はこの3冊を含む太宰作品を2012年から2013年にかけてKindleの0円版で揃えました。10年以上たった今も配信は続いています(配信状況・価格は変わることがあるためストアでご確認ください)。

Step3・4: 斜陽で長さに慣れて人間失格へ

斜陽は戦後に発表された中編で、没落していく貴族の家族を娘の視点から描きます。短編より腰を据える必要はありますが、日記や手紙を挟みながら進む構成なので区切りがつけやすく、長さに慣れる練習台としてちょうどよい1冊です。

そして最後に人間失格。ここまで来れば、太宰の語り口にも、明るさの底にある不安の気配にも馴染んでいるはず。手記形式の掴みどころのなさも、「桜桃で読んだ独白の長いもの」と捉えれば構えずに入れます。

それでも難しいと感じたら、版を変えるという手があります。0円版には注釈がほとんど付いていませんが、新潮文庫や角川文庫の電子版には注釈や解説が付いており、昭和初期の言葉の壁をかなり下げてくれます。読みやすさは版で変わる。これは高校生の「文庫によって苦労した」という声の裏返しでもあります。

止まりそうになったら耳から再開する

途中で止まってしまったら、無理に同じページへ戻る必要はありません。おすすめは朗読で耳から再開する方法です。

  • 目で止まった箇所を耳が越えてくれる難しい言い回しも、朗読なら音の流れで頭に入ります。文字で挫折した箇所の少し手前から聴き直すと、自然に物語へ戻れます。
  • 走れメロスは朗読と相性がよい一本道の筋と疾走感のある文章は、耳で聴いても失速しません。通勤や家事の30分がそのままStep1になります。
  • 主要な朗読サービスは2つAudibleとaudioBook.jpのどちらでも文学作品の朗読が聴けます。使い勝手の違いは、下の比較記事をどうぞ。

関連記事: オーディオブック比較|Audibleとaudiobook.jpの違いと選び方

読み終えたら次へ進む

4ステップを終えたら、次の分かれ道は2つあります。

人間失格を読んで「分かったような、分からないような」と感じた人へ。その感覚は失敗ではありません。何が難しさの正体なのか、どう読み直せばよいのかを別の記事で掘り下げています。

関連記事: 人間失格は難しい?わからないと感じる理由と再挑戦ルート

太宰以外の文豪へ幅を広げたい人へ。漱石・芥川・梶井など、近代文学ぜんたいを所要時間の短い順に登るロードマップを用意しています。

関連記事: 日本近代文学の入門ロードマップ|30分の短編から長編へ

まとめ|人間失格は最後でいい

太宰治はどれから読むか。この記事の答えは「走れメロスから。人間失格は4冊目」です。

  • 今夜30分で走れメロス0円版で今すぐ読めます。太宰=暗い、のイメージがまず崩れます。
  • 短編で幅を、中編で長さを桜桃・グッド・バイで作風に、斜陽で分量に慣れる。階段は一段ずつ。
  • 止まったら耳から朗読での再開は、挫折を「中断」に変えてくれます。

中一だから難しいのでも、大人なのに読めないのでもありません。頂上から登ろうとしただけ。入口を変えれば、太宰は読めます。

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