財務3表一体理解法は難しい?新版と増補改訂版の違いと読む順番

「説明の図が複数ページにわたると、話においつけなくなりました」。
國貞克則『財務3表一体理解法』は難しいのか、2021年の新版と手元の増補改訂版は何が違うのか、5冊以上あるシリーズをどの順で読むのか。ブクログにあるこの声の一方で、版元は「簿記を勉強しなくても会計がわかる!」と言い切る。書店には「新版」「新版 発展編」「新版 図解分析法」「管理会計編」「一体ドリル」が並び、Kindleストアには2009年の旧版のページに「旧版のようです」と注意を促すレビューまである。どれから、何冊、旧版を持っているなら買い直すのか。書店ページを見ても差分は書いていない。
先に整理しておくと、新版は増補改訂版を2冊に分けたものです。著者サイトは「2分冊となり」と書き、目次で見るかぎり増補改訂版の第1〜2章が新版本体、第3〜5章が『新版 発展編』に当たる。なお本記事で「増補版」と呼ぶ本は、紙と国立国会図書館の書誌では『増補改訂 財務3表一体理解法』(朝日新書584・2016年)、Kindleでは『増補版 財務3表一体理解法』と表記される同じ本。筆者が持っているのはこのKindle版と旧3部作の残り2冊、それにドリルの計4冊で、いずれも今は後継版が出ている旧版だ。この記事は会計の中身の要約ではなく、買う前・買い直す前の地図。版の系譜、新版と増補改訂版の目次対応、読む順番、Kindleで止まりやすい場所を、著者サイト・版元・目次と読者の声で整理します。
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『増補改訂 財務3表一体理解法』(Kindle表記は『増補版 財務3表一体理解法』)
國貞克則/朝日新書584/新書330ページ(2016年10月・国立国会図書館表記)/Kindle「本の長さ」349ページ・リフロー型
目次
- 難しいかの結論|版元は「簿記を勉強しなくても」、読者からは3級があると深く理解できるの声。止まるのは図が複数ページにまたがる所と終盤の減価償却
- どんな本か|2007年初版から2025年一体ドリルまでの系譜と、所持4冊の書誌
- 新版と増補改訂版の違い|著者「2分冊となり」。増補版の第1〜2章が新版本体、第3〜5章が発展編
- 5冊の読む順番|旧3部作は理解→分析→実践活用、新版体系は基礎編→図解分析法→発展編→管理会計編
- Kindleで止まる場所とドリル・音声版|「見開き2ページ」が電子版で効かない構造
- 読み終えたら次に読む本|仕組みの前に歴史なら会計の世界史、財務3表の次はファイナンスと決算書の実践へ
- まとめ|新版は増補版の2分冊。旧版持ちは目次対応表で判断し、読む順は基礎編から
難しいかの結論|版元は「簿記を勉強しなくても」、読者からは3級があると深く理解できるの声。止まるのは図が複数ページにまたがる所と終盤の減価償却
簿記の資格がなくても読める設計、というのが版元と著者の立場です。読者の側からは「簿記3級レベルの知識をつけた方がより深く理解できると思います」(ブクログ・2025年5月)のような補足が繰り返し出てくる。止まりやすいと言われている場所は、会計の内容そのものより、図が複数ページにまたがる箇所と、取引を一つずつ財務3表に落としていく「会計ドリル」の終盤にある減価償却のくだりに集中しています。
版元の紹介文は2007年の初版から一貫している。「簿記を勉強しなくても会計の仕組みがわかる!ポイントは財務3表の五つの『つながり』」(初版)、「簿記を勉強しなくても会計がわかる!」(新版・Amazonの出版社からのコメント)。BookLiveの2007年版レビューが引く著者の言葉はこうだ。「簿記や仕訳を勉強した人とさして変わりがなく、『全体像の把握』についてはそれ以上の理解が得られる」。
読者の側の受け止めは、簿記との距離で分かれます。
- 簿記3級があると楽、という声「簿記3級レベルの知識をつけた方がより深く理解できると思います」(ブクログ・2025年5月)。「簿記3級ではキャッシュフローは出てこないので、そこが例を出して細かく書いてあったのは良かった」(BookLive・新版・2025年11月)。「簿記2級まで持っていたが、この本を読んで財務三表のつながりをちゃんと理解していなかったことを痛感した」(ブックオフ・新版レビュー)。逆に「簿記を勉強したことがあればあえて読む必要はないかも」(ブクログ・2023年1月)という声もある。
- 図が複数ページにまたがる所で止まる「わかりやすいという評価の本書ですが、わたしは途中で一部ついていけなくなりました。説明の図が複数ページにわたると、話においつけなくなりました・・」(ブクログ・2023年7月)。同じ人は「わたしは簿記3級を勉強中の素人ですが、挫折せず読むことができました。(他の本は入門なのに挫折したことがあります)」とも書いている。止まったのは知識ではなく、図の見せ方の問題だという読み方です。
- 終盤の減価償却「終盤の減価償却のあたりなどは、『なにを言ってるんだろう』と頭があまり回りませんでしたが」(ブクログ・新版・2026年9月)。増補改訂版については、書評を書いた個人ブログに「第3章以降は難易度は一気に上がり」という記述がある。第3章は新会計基準を扱う発展編で、新版では別冊に分かれた部分にあたります。
- 簿記で挫折した人の声「大学の時に簿記の授業を受けましたが、わからない!面白くない!で散々でした。読んでみた感想としては、わかりやすい!面白い!でした」(Amazon・新版・2026年9月)。増補版には「勘定科目を見るだけでアレルギー反応が出そうなくらいでしたが、この本を読んだところ、すんなりと肚に落ちて行きました」(Amazon・2020年5月)。
向かない人もはっきり出ている。「期待していたほど深い内容ではなく、ある程度会計の知識がある人にとっては物足りなさを感じる部分もありました」(Amazon・新版・2026年7月)。位置づけとして分かりやすいのは次の声だ。「まったく何も知らない初心者よりは、実際の財務諸表に触れて途方にくれている新入社員のような人に向いているのではないだろうか」「講義用テキストというよりは、各自で行う自習ドリルの教材として最適だと思う」(Amazon・新版・2026年5月)。増補版のレビューには「手を動かして読むべきで、通勤中に読むには少しハードルが高いかもしれません」(ブクログ・2023年9月)ともある。要約で済ませたい人、簿記検定の対策本を探している人が選ぶ本ではなく、机で手を動かす前提の教科書。この前提を受け入れてから開くと、図で止まったときに「紙面の都合」と切り分けやすくなります。
どんな本か|2007年初版から2025年一体ドリルまでの系譜と、所持4冊の書誌
著者の國貞克則氏は1961年岡山県生まれ。東北大学工学部を出て神戸製鋼所に入り、1996年にクレアモント大学ピーター・ドラッカー経営大学院でMBAを取得、2001年にボナ・ヴィータ コーポレーションを設立した人物です(Amazonの著者紹介)。初版は2007年5月に朝日新書から出て、部数は版元・書店の表記で「累計50万部突破」(2012年・紀伊國屋の実践活用法紹介)、「シリーズ累計60万部突破」(2016年・増補版のAmazon紹介文)、「シリーズ累計80万部突破」(2021年・新版の版元紹介)、「シリーズ累計90万部」(2025年・一体ドリルの版元紹介)と推移してきた。同名を冠する本が20年近くかけて増えたので、まず全体を1枚に。
| 書名 | 刊行 | レーベル | 紙の頁数 | Kindle「本の長さ」 | 位置づけ |
|---|---|---|---|---|---|
| 財務3表一体理解法(初版) | 2007年5月 | 朝日新書044 | 238ページ(NDL) | ― | 非所持。5章構成 |
| 増補改訂 財務3表一体理解法 | 2016年10月 | 朝日新書584 | 330ページ(NDL) | 349ページ・27.4MB | 所持(Kindle表記「増補版」)。初版の増補改訂版 |
| 新版 財務3表一体理解法 | 2021年2月 | 朝日新書803 | 256ページ(版元) | 227ページ・16.9MB | 非所持。増補改訂版の基礎編を分冊 |
| 新版 財務3表一体理解法 発展編 | 2021年2月 | 朝日新書804 | 248ページ(版元) | ― | 非所持。増補改訂版の発展編を分冊 |
| 財務3表一体分析法 | 2009年5月 | 朝日新書174 | 263ページ(NDL) | 293ページ・17.5MB | 所持。旧3部作の第2弾 |
| 財務3表図解分析法 | 2016年10月 | 朝日新書585 | 263ページ(NDL) | ― | 非所持。一体分析法の全面改訂・改題 |
| 新版 財務3表図解分析法 | 2021年2月 | 朝日新書805 | 264ページ(版元) | ― | 非所持。新版と同時刊行の「姉妹編」 |
| 財務3表実践活用法 | 2012年7月 | 朝日新書356 | 202ページ(NDL) | 243ページ・3.6MB | 所持。旧3部作の第3弾 |
| 財務3表一体理解法「管理会計」編 | 2024年2月 | 朝日新書947 | 216ページ(版元) | ― | 非所持。実践活用法の大改訂 |
| 書いてマスター!財務3表・実践ドリル | 2010年12月 | 日本経済新聞出版社 | 99ページ(NDL) | 151ページ・29.5MB | 所持。一体理解法のドリル版 |
| 書いてマスター!財務3表一体ドリル | 2025年1月 | 日経BP 日本経済新聞出版(A5判) | 96ページ(版元) | ― | 非所持。実践ドリルの増補改訂版 |
紙の頁数は、2021年以降の本は版元ドットコムの登録データ、それ以前の本は国立国会図書館(NDL)の書誌に統一。Kindleの「本の長さ」はAmazon商品ページの表記で、リフロー換算の数字なので紙の頁数とは一致しません。
筆者が持っているのは表の「所持」4冊で、すべてKindle版。2019年12月に増補版(購入当時540円)、2020年9月に一体分析法と実践活用法を各450円、同じ月に実践ドリルを480円で買い足したものです(価格は時期により変わります)。増補版のファイルは27.4MBあり、Amazonの商品ページには「ファイルサイズが大きいためダウンロードに時間がかかる場合があります」の注記が付く。図版の多さがファイルサイズに出ている本だ。そして2026年9月時点で、この4冊にはすべて後継版がある。増補版は新版2冊に、一体分析法は新版図解分析法に、実践活用法は管理会計編に、実践ドリルは一体ドリルに。旧版を持っている人が書店の新版の棚を前にして迷う構図は、そのまま筆者の構図でもあります。
名称の入り組み方には注意が要る。一体分析法のKindleページには「旧版のようです。新版があるためご購入の際はお気をつけください」(2024年7月)というレビューがあり、名称の混同が起きやすい構図になっています。図解分析法についてはCiNiiが一体分析法からの「書名変更」として登録し、著者サイトも「2009年に出版された『財務3表一体分析法』の全面改訂版。本書の特徴の『図解分析』に合わせてタイトルが変更された。分析データが最新のものになり、海外企業の事例が増えている」と説明している。一方、実践活用法と管理会計編は改題ではなく、著者サイトの言葉では「『財務3表実践活用法』が大改訂され趣向の異なる本となった」別の本という扱いです。
新版と増補改訂版の違い|著者「2分冊となり」。増補版の第1〜2章が新版本体、第3〜5章が発展編
「新版 違い」の答えは、分冊です。著者サイトの説明はこうなっている。「2016年に出版した『増補改訂 財務3表一体理解法』が2分冊となり、基礎編が本書に、発展編が『新版 財務3表一体理解法 発展編』となった。会計の専門家ではない人向けの会計学習の定番教科書」。版元の紹介文は「シリーズ累計80万部突破、会計学習の『定番教科書』を再改訂。取引ごとに財務3表をつくる『会計ドリル』はそのままに、初学者を意識して会計の基本から読み解き方まで基礎重視の構成に再編成。読みやすさもアップ、全ビジネスパーソン必読!」。発展編の側は「『一体理解法』『図解分析法』の旧版から応用テーマを集めて再編成。会計ドリルを使った新会計基準の仕組み解説や『純資産の部』の徹底解明など、『一歩上』を目指すビジネスパーソンに最適!」と紹介されています。Amazonの出版社からのコメントによれば、新版・発展編・新版図解分析法は「3冊同時刊行!」。
では増補版のどの章がどちらに行ったのか。書店掲載の目次を並べると次の対応になります。
| 増補改訂版(2016年)の章 | 新版(2021年)での位置 |
|---|---|
| 第1章 財務3表の基礎知識 | 『新版』第1章 財務3表の基礎知識(節: なぜ会計が簡単に理解できるのか/会計の全体像/複式簿記とは何か/CSは会社の家計簿 ほか) |
| 第2章 財務3表一体理解法―基礎編(節: 財務3表のつながりを理解する/一つひとつの取引が財務3表にどう反映されるかを理解する/配当の仕組みと「株主資本等変動計算書」を理解する) | 『新版』第2章 財務3表一体理解法~基礎編(節は増補改訂版と同じ3節) |
| (該当なし) | 『新版』附章 財務3表の読み解き方(PLとBSを図にしてみる/CS分析の方法)=新版で新設 |
| 第3章 財務3表一体理解法―発展編(2000年以降に出てきた新しい会計基準) | 『発展編』第2章 財務3表一体理解法~新会計基準編 |
| 第4章 さらに理解を深めたい人のために(「連結」と「非支配株主持分」/IFRSにおける「包括利益」/「純資産の部」の徹底理解/組織再編会計) | 『発展編』第3章 「純資産の部」の徹底理解/第4章 組織再編に係る会計について/第5章 国際会計基準(IFRS)と連結会計について |
| 第5章 英文会計の基礎知識 | 『発展編』附章 英文会計の基礎知識 |
| (該当なし) | 『発展編』第1章 序(『新版 財務3表一体理解法』の下巻という位置づけについて) |
この対応は目次上のもので、本文がどこまで書き換わったかは確認していません(筆者は新版を持っていない)。分量で見ると、増補版はKindle表記で1冊349ページ。新版本体はKindle表記227ページ(紙は版元表記256ページ)、発展編は紙248ページ(版元表記)で、合わせて2冊になった。増補版の第2章と同じ3節構成の会計ドリルが新版本体に残り、増補版で「第3章以降は難易度は一気に上がり」と言われた部分が発展編へ移った、というのが目次から読める構造です。
増補版を持っている人が新版を買い足すべきかは、断定しません。判断材料として並ぶ事実は次の5つ。
- 骨格は「そのまま」と版元が明言会計ドリルと、増補版の紹介文にある「取引ごとに財務3表をつくり、5つの『つながり』を確認しながら、会計の全体像と仕組みを学んでいく」という学び方は、新版でも「そのまま」と書かれている。
- 会計基準の改定は読者から指摘がある「私が読んだ時期が2025年になるが2016年初版増補改訂ver.からは会計基準が変わっているのでルールや名称が変わってる箇所があるのは注意が必要である」(ブクログ・増補改訂版・2025年4月)。どの基準がどの箇所に影響するかは、版元・著者の説明では確認できていない。
- 1冊が2冊になった増補版1冊で読めた範囲が、新版では本体と発展編に分かれた。基礎編だけで済む人は1冊、新会計基準・純資産の部・組織再編・IFRSまで要る人は2冊。増補改訂版の書評を書いた個人ブログは「新版であれば『新版 財務3表一体理解法』から手に取るのがオススメ。発展編は専門的な内容なので、必要な場面で手に取ればよい」(2021年8月)と書いている。
- 新版にだけある附章「財務3表の読み解き方(PLとBSを図にしてみる/CS分析の方法)」は増補版の目次にない。読み解き方の入口を同じ本の中で欲しい人には差分になる。
- 電子版の仕様増補版のKindleは349ページ・27.4MB、新版のKindleは227ページ・16.9MB。どちらもX-Ray(用語や登場人物を一覧できる機能)は有効で、リフロー型。
もう一つ、新版図解分析法については、著者サイトによれば「第3刷でROICの解説を追記」とあり、同じ新版でも刷によって内容に差がある。書店で新版図解分析法を手に取るなら奥付の刷を見ておくと、レビューとの食い違いを避けられます。
5冊の読む順番|旧3部作は理解→分析→実践活用、新版体系は基礎編→図解分析法→発展編→管理会計編
順番は、版元・著者・読者の3系統で語られていて、旧体系と新体系で本の名前が違う。先に3系統を並べます。
| 系統 | 順番 | 根拠 |
|---|---|---|
| 旧3部作(版元) | 一体理解法 → 一体分析法 → 実践活用法 | 紀伊國屋の実践活用法紹介「累計50万部突破の『財務3表シリーズ』第3弾。『理解』から『分析』、そして『実践活用』へ」 |
| 新版体系(著者サイト・章題) | 新版 一体理解法 → 新版 図解分析法(「姉妹編」)→ 新版 発展編(「下巻という位置づけ」)→ 管理会計編 | 著者サイトが新版図解分析法を「同時刊行した『新版 財務3表一体理解法』の姉妹編」と説明。発展編の第1章題が「序(『新版 財務3表一体理解法』の下巻という位置づけについて)」 |
| 読者レビュー | 一体理解法 → 図解分析法 → 発展編 | 「『財務3表一体理解法』→『財務3表図解分析法(本書)』→『財務3表一体理解法 発展編』の順番で読むことが推奨されている」(BookLive・新版図解分析法レビュー・2023年11月)。旧体系では「著者の國貞克則氏の3部作を『財務3表一体理解法』→『財務3表一体分析法』→『財務3表実践活用法』の順番で読んでいった」(Amazon・実践活用法・2014年8月) |
旧版を持っている人のために、旧体系と新体系の対応も置いておきます。
| 旧体系(所持) | 新体系(非所持) | 関係 |
|---|---|---|
| 増補改訂 一体理解法(2016) | 新版 一体理解法+新版 発展編(2021) | 2分冊(著者サイト) |
| 一体分析法(2009) | 図解分析法(2016)→ 新版 図解分析法(2021) | 全面改訂・改題(著者サイト・CiNii「書名変更」) |
| 実践活用法(2012) | 「管理会計」編(2024) | 大改訂で「趣向の異なる本」(著者サイト)。版元は「経営目線からの投資評価や事業再生の分析は『実践活用法』からほぼ踏襲」 |
| 実践ドリル(2010) | 一体ドリル(2025) | 増補改訂・A5判に変更(版元・著者サイト) |
読者の側は、この順番をどう受け止めているか。発展編のレビューは「『理解法』『分析法』の要点は本書でもおさらいしてくれるが、上2冊を一通り読んでから読み始めるのをおすすめする」「基礎編→図解法→発展編と読み進めたことで会計の流れ・着眼点が一通り理解できた」(BookLive)。旧3部作の3冊目については「前2冊の復習4割、管理会計6割くらい」「3部続くとさすがに前作、前々作の焼き回し感が否めない」(ブクログ・実践活用法)という声があり、復習が多いことは3冊目を急がない理由にも、単独で読める理由にもなる。発展編の読者は「著者はさらに会計の知識を深める本として著者自身の次の本を紹介しています。・『財務3表実践活用法』(この本を踏襲した『管理会計編』が最近発売されています。)・『できる人になるための財務3表』」(Amazon・2024年6月)と、本文で次の本が案内されていることを書いています。シリーズ全体については「財務3表について、このシリーズ(合計5冊だったかな?)を一通り読めばかなり勉強になる」(Amazon・実践活用法・2025年6月)。
順番の手前に、もう1段あります。一体理解法で止まった人が戻る本を、著者自身が挙げている。セミナー案内(2013年)には「本セミナーは会計の初心者の方でも安心して受講いただける内容ですが、不安がある方は受講前に『ストーリーでわかる財務3表超入門』(ダイヤモンド社)をお読み…」とあり、著者サイトは同書を「物語形式で高校生でも会計の仕組みが理解できる」と説明している。もう1冊、『図解「財務3表のつながり」でわかる会計の基本』は著者サイトの言葉で「『財務3表一体理解法』と『財務3表図解分析法』の要点をさらにわかりやすく解説した本」。筆者はこの2冊も2019年12月に増補版と同時にKindleで買っている。ブクログには「会計知識をつけたくて、著者の『財務3表一体理解法』にチャレンジしたものの途中挫折。これではいかんと、財務3表に再チャレンジ。やはりストーリー仕立てだと理解しやすいですね」という、そのままの導線を辿った人の声がある。
- ストーリーでわかる財務3表超入門(ダイヤモンド社・所持)著者が「不安がある方は受講前に」と挙げる物語形式の入門。一体理解法の前に置く本。
- 図解「財務3表のつながり」でわかる会計の基本(所持)一体理解法と図解分析法の要点を著者自身が圧縮した本。2冊の骨組みを先に掴む用途。
Kindleで止まる場所とドリル・音声版|「見開き2ページ」が電子版で効かない構造
増補改訂版の売りは、著者サイトの言葉で「財務3表を一体にした図が見開き2ページに収まり格段に読みすくなった」こと。版元も「財務3表を見開き2ページにおさめてビジュアル力アップ」と書いています。見開きは紙の概念で、スマホのKindleには見開きがない。筆者の所持版はKindle(349ページ表記・27.4MB)なので、この売りがそのまま効くとは限らない立場にあります。実際、電子版の読者から出ている「止まる場所」は、内容ではなく図と本文の往復に集中している。
- スマホで図と本文を行き来する「文章はわかりやすいが、図を使った説明が多いため、スマホだとページの行ったり来たりが多く発生して読みづらい」(Amazon・新版Kindle版・2026年3月・星3)。「電子版だと表と文章を見比べるのが困難で、他書籍のように文章と図が一枚で示されてないとかなりストレスに感じてしまう」(BookLive・新版・2025年12月)。
- 変化前後の表を同じ画面で見たい「新しい仕分け発生のたびに財務三表をチェックするが変わる前と両方同ページで見られると理解がしやすかったように思えた」(ブクログ・新版・2026年2月)。「ページを行ったり来たりするのが少し大変でしたが、まあ仕方ないのかな」(ブクログ・2025年3月)。
- 紙の読者が使っている回避策発展編について「本書の後ろのページに見開きの表がついており、これを開きながら読むことで『繋がり』を見失うことなく進められる」(Amazon・2023年5月)。新版図解分析法には「図と説明が見開きで見られると読むのが楽だろうなあ、と思いました」(Amazon・2025年6月・星4)。巻末の表を開きながら読む、という紙ならではの読み方が、電子版では再現しにくい。
図版の多い本を電子で読むなら、端末の画面サイズとアプリの表示機能で読み心地が変わります。ビジネス書向けのアプリの比較は次の記事で。
関連記事: ビジネス書を読むならどの電子書籍アプリ?目的別に徹底比較
ドリルはどうか。『書いてマスター!財務3表・実践ドリル』(2010年)は著者サイトの言葉で「『財務3表一体理解法』のドリル版。会計を理解するには、自分で手を動かして数字を記入するのがよい。2007年2月に出版された『書いてマスター!決算書ドリル』の増補改訂版」。筆者はこれをKindleで持っていて(2020年9月・購入当時480円)、Kindle版の評価はシリーズで最も低い3.9(166件・2026年9月時点)。理由がはっきり書かれたレビューがある。「本書の3分の1くらいは直接書き込むドリルなのでKindleで購入してもあまり意味が無いと思う」(Amazon・2019年6月)。紙の読者側でも、巻末の3表がそのままでは書き込みにくいという不満(Amazon・2024年8月・星2)と、白紙の解答用紙が付いていて何度も練習できるという評価(Amazon・2016年9月)の両方が出ている。
分量は少なめで、1時間あれば終わるという声(読書メーター・紀伊國屋転載・2019年11月)がある一方、手を動かしたので正味1日で概要が掴めたという人(Amazon・2023年1月)もいる。仕様面では、初年度処理のみ・三分法処理である点を承知して買うようにという注意(Amazon・2022年3月)。2025年1月にはこの本の増補改訂版『書いてマスター!財務3表一体ドリル』(A5判・96ページ・版元表記)が出て、著者サイトは「A5判サイズになりましたが、ドリルの数字書き込みスペースは以前の大型版と大差ありません」と説明している。書き込む前提の本なので、買うなら紙、というのがレビューと判型の変遷から読める方向です。
音声版もある。新版はAudibleとaudiobook.jpの両方にあり、Audible版のナレーターは近藤浩徳で「本タイトルには付属資料・PDFが用意されています」の表記、audiobook.jp版のナレーターは海老沢潮で再生時間4時間58分36秒・添付資料53点・トラック数15(2024年5月販売開始)。ナレーターが違うので別収録です。図版本を耳で聴くときの拠り所は添付資料の枚数になるので、53点という数字は選ぶ材料になる。2つのサービスの違いは次の記事で比較しています。
関連記事: オーディオブック比較|Audibleとaudiobook.jpの違いと選び方
読み終えたら次に読む本|仕組みの前に歴史なら会計の世界史、財務3表の次はファイナンスと決算書の実践へ
一体理解法は会計の入口なので、読み終えた先は「歴史に戻る」「ファイナンスへ進む」「決算書を実際に読む」の3方向に分かれます。筆者の蔵書から、方向ごとに1冊ずつ。
- 仕組みの前に歴史から: 会計の世界史(田中靖浩・所持)会計ドリルで手が止まる人は、なぜ複式簿記や財務諸表がそういう形になったかを物語で先に押さえる手がある。数字が出ない読み物で、3部9章の構造は別記事で整理した。
- 財務3表の次はファイナンス: ざっくり分かるファイナンス(石野雄一・光文社新書・所持)会計の次にファイナンスへ進む順番は定番で、Kindle表記293ページの入門新書。2022年に出た「超ざっくり」版との違いは別記事で扱う。
- 決算書を読む実践へ: バフェットの財務諸表を読む力(メアリー・バフェット&デビッド・クラーク・徳間書店・所持)決算書を読む実践側に置かれる本。著者はバフェット本人ではなく元義娘のメアリー・バフェットで、前提知識と5部構成の読み方は別記事で。
- 決算書の読み方を体系で: 決算書の読み方 最強の教科書(吉田有輝・ソシム・所持)Kindleは375ページ表記・136.4MBの大容量ファイル。筆者は2021年2月に購入した。著者は吉田有輝氏で、矢部謙介氏の本と混同されやすいので念のため。
- 指標を図で並べる: 会計指標の比較図鑑(矢部謙介・所持)副題は「見るだけでKPIの構造から使い方までわかる」。新版図解分析法の先に置く本で、2026年1月に購入。
会計の歴史から入り直す人向けに、10月1日公開の記事がある。
関連記事: 会計の世界史は難しい?文庫はマンガ版だけ、時系列が戻る3部9章
財務3表の次にファイナンスへ進む人には、同じ「難しい?」の型で整理した記事。
関連記事: ざっくり分かるファイナンスは難しい?超ざっくり版との違いと止まる章
決算書を実際に読む側に進むなら、前提知識と5部構成をまとめた次の記事へ。
関連記事: バフェットの財務諸表を読む力は難しい?前提知識と5部構成の読み方
まとめ|新版は増補版の2分冊。旧版持ちは目次対応表で判断し、読む順は基礎編から
- 難しさの種類版元は「簿記を勉強しなくても」、読者からは3級があると深く理解できるの声。止まると言われるのは図が複数ページにまたがる所と終盤の減価償却で、机で手を動かす前提の本。
- 新版と増補改訂版の違い著者サイトの言葉で「2分冊」。目次で見るかぎり増補版の第1〜2章が新版本体、第3〜5章が発展編で、新版本体には附章「財務3表の読み解き方」が新設。会計ドリルは版元が「そのまま」と明言し、会計基準の改定は読者の指摘がある。買い直すかは、この並びで各自が決める。
- 読む順番旧3部作は理解→分析→実践活用。新版体系は基礎編→図解分析法(姉妹編)→発展編(下巻)→管理会計編。手前に戻るなら著者自身が挙げる『ストーリーでわかる財務3表超入門』。
- Kindleで読むなら「見開き2ページ」の売りは紙の話。図と本文の往復が止まる場所になるので、端末とアプリを選ぶ。書き込み式のドリルは紙向き。音声版はAudibleとaudiobook.jpで別収録。
筆者の手元にある4冊は、すべて後継版が出た旧版です。だからこそ、目次対応表と版元・著者の説明を並べる作り方にしました。旧版を持っている人は表で自分の本の位置を確かめてから、これから買う人は新版の基礎編から。順番と版さえ間違えなければ、この本で迷う理由の半分は消えます。
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