戦略的思考とは何かは同名が3冊?ゲーム理論版と岡崎久彦版

「戦略的思考とは何か」で検索すると、ゲーム理論の本と岡崎久彦氏の中公新書が混ざって出てくる。勧められたのは、どちらの本なのか。
この題名を持つ本は、少なくとも3冊ある。ディキシット氏とネイルバフ氏のゲーム理論の入門書、岡崎久彦氏の国家戦略論、そして大前研一氏の『企業参謀』だ。分野がまったく違うので、勧めた人の文脈で見分けられる。この記事では、3冊を版元・刊行年・目次で並べ、そのうえで主にゲーム理論版の書誌と続編との関係を整理する。
扱うのは本の見分け方と書誌で、ゲーム理論や戦略論の中身の解説ではない。当ブログは2020年3月にゲーム理論版のKindle版を購入している。
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『戦略的思考とは何か エール大学式「ゲーム理論」の発想法』
アビナッシュ・ディキシット、バリー・ネイルバフ 著/菅野隆・嶋津祐一 訳/TBSブリタニカ(1991年)、現在はCEメディアハウス/334ページ
「戦略的思考とは何か」は同じ題名が3冊ある
同じ言葉を書名に持つ本が、分野違いで3冊ある。
- ゲーム理論の本アビナッシュ・ディキシット、バリー・ネイルバフ著『戦略的思考とは何か エール大学式「ゲーム理論」の発想法』(1991年)。ビジネスや交渉で相手の出方を読む考え方を扱う。
- 国家戦略の本岡崎久彦著『戦略的思考とは何か』(中公新書、1983年、2019年に改版)。日本の外交と安全保障を論じる。
- 経営戦略の本大前研一著『企業参謀』。新装版の副題に「戦略的思考とは」の句が入る。
見分ける手がかりは、勧められた文脈だ。ビジネスの駆け引きや交渉、経済学の流れで聞いたならゲーム理論版。外交や安全保障、日本の近現代史の流れなら岡崎版。コンサルタントの問題解決や経営企画の話なら『企業参謀』の可能性が高い。
3冊の対照表
| 項目 | ゲーム理論版 | 岡崎久彦版 | 企業参謀 |
|---|---|---|---|
| 著者 | ディキシット、ネイルバフ(菅野隆・嶋津祐一 訳) | 岡崎久彦 | 大前研一 |
| 分野 | ゲーム理論(翻訳書) | 国家戦略論 | 経営戦略 |
| 版元・刊行 | TBSブリタニカ 1991年10月→現CEメディアハウス | 中公新書 1983年8月/改版2019年8月 | プレジデント社 1975年(続編1977年)/新装版1999年 |
| 頁数 | 334ページ | 改版336ページ | 新装版 約400ページ |
| 見分けるキーワード | エール大学式・ゲーム理論・囚人のジレンマ | 中公新書・日露戦争・同盟戦略 | 大前研一・企業参謀 |
書店や電子書店で探すときは、書名に著者名か「ゲーム理論」「中公新書」を足して検索すると、取り違えずにたどり着ける。
ゲーム理論版(ディキシット&ネイルバフ)
原題は『Thinking Strategically』(1991年)。邦訳は同じ1991年にTBSブリタニカから出た。CiNiiの書誌によると、24刷と25刷では版元表示が阪急コミュニケーションズに変わっていて、現在の版元はCEメディアハウスだ。版元は変わっているが、訳者は菅野隆・嶋津祐一のままで、新訳が出たわけではない。電子版は2017年5月から配信されている(ebookjapanの表記)。
CEメディアハウスの紹介文は「エール大学で教授される戦略思考の原点を、ビジネス・映画・スポーツ・国際政治などの実例でわかりやすく解説。」と書く。同じページには本文の一節として「戦略的思考とは、相手がこちらを出し抜こうとしているのを承知したうえで、さらにその上をいく技である。」が引かれていて、これが書名の問いへの本書の答えになっている。
目次は序章と3部で構成されている(書店の書誌データ)。
| 部 | 章 |
|---|---|
| 序章 | 戦略的思考とは何か |
| 第1部 ゲーム理論の基本的コンセプト | 戦略ショートショート/交互行動ゲーム/同時進行ゲーム |
| 第2部 基本的コンセプトの発展 | 囚人のジレンマ/戦略活用行動/実行の確約/予測不能性 |
| 第3部 ゲーム理論の戦略的状況への応用 | 瀬戸際戦略/協力と協調/投票/交渉/誘因/ケース・スタディ |
DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの記事(2018年)は、本書を「ゲーム理論をビジネスで活用する方法を学ぶ者にとって必読の古典的名著」と紹介している。第3部に「交渉」の章があり、交渉術の本からゲーム理論に進むときの橋渡しにもなる。
ゲーム理論は経済学の教科書でも扱われる分野だ。教科書の側から入りたい人には、ミクロ経済学の定番書を整理した記事がある。
関連記事: ミクロ経済学の力は独学できる?定番教科書のレベルと使い方
岡崎久彦版(中公新書)
岡崎久彦氏は1930年生まれの外交官で、外務省に入省した経歴を持つ(紀伊國屋書店の著者紹介)。『戦略的思考とは何か』は1983年に中公新書から出て、2019年8月に改版された。改版のISBNは978-4-12-180700-7だ。
版元の内容紹介は「平和を望むなら、戦略論の教養は欠かせない。歴史と地理を入り口に、日本が置かれた戦略的環境を解明。国家戦略を論じたロングセラー。」。目次には「日清戦争と軍事バランス」「日露戦争からの四十年」「核の戦略」「日本の同盟戦略」などが並び、ゲーム理論版とは扱う対象がまったく違う。
版元が「ロングセラー」とうたうとおり、外交や安全保障の文脈で読まれてきた本だ。ビジネスの意思決定や交渉の本を探しているなら、こちらではない可能性が高い。
大前研一『企業参謀』との関係
3冊目は経営戦略の本だ。大前研一氏の『企業参謀』は1975年、続編の『続・企業参謀』は1977年にプレジデント社から出た。1999年の新装版で2冊が1冊に合本されていて、その副題に「戦略的思考とは」の句が入る(表記は書店により「何か」「なにか」で揺れる)。
コンサルティングの問題解決や戦略立案の文脈で「戦略的思考」と言われたなら、こちらを指していることもある。当ブログでは、半世紀前の本を今読む価値を別の記事で整理している。
関連記事: 企業参謀は古い?大前研一の戦略的思考を今読む価値
ゲーム理論版には上級篇がある
ゲーム理論版には、同じ著者による『戦略的思考をどう実践するか エール大学式「ゲーム理論」の活用法』(阪急コミュニケーションズ、2010年、415ページ)がある。原題は『The Art of Strategy』。版元はこれを「ベストセラー『戦略的思考とは何か』の上級篇」と紹介している。
書名がよく似ていて、どちらも副題が「エール大学式「ゲーム理論」の」で始まるので、ここでも取り違えが起きやすい。発想法が1991年の『とは何か』、活用法が2010年の『どう実践するか』と覚えておくと区別しやすい。
翻訳書の定番を電子でそろえるなら、セールやクーポンの多いストアを知っておくと選択肢が広がる。
関連記事: 電子書籍のセール・クーポンが多いアプリ徹底比較|お得に買う3選
ちなみに当ブログがKindle版を購入したのは2020年3月で、購入当時2,655円だった。価格は時期により変わる。
まとめ|分野で見分ける
- 同じ題名が3冊ゲーム理論(ディキシット&ネイルバフ)、国家戦略(岡崎久彦・中公新書)、経営戦略(大前研一『企業参謀』)。
- ゲーム理論版は1991年の翻訳書334ページ・序章と3部構成。版元はTBSブリタニカから阪急コミュニケーションズ、CEメディアハウスへ。訳は変わっていない。
- 岡崎版は1983年の新書2019年に改版。日清・日露戦争から同盟戦略までを扱う。
- 上級篇は『戦略的思考をどう実践するか』2010年刊・415ページ。副題が似ているので注意。
勧められた文脈がビジネスや交渉ならゲーム理論版、外交や安全保障なら岡崎版、コンサルティングなら『企業参謀』。探すときは著者名を添えて検索すれば、取り違えずに済む。
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