顧客起点マーケティングと顧客起点の経営どっちから?中盤で重なる章

顧客起点マーケティングと顧客起点の経営どっちから?中盤で重なる章

上司に「顧客起点マーケティング、読んどいて」と言われてAmazonを開いたら、同じ著者の『顧客起点の経営』が隣に並んでいて手が止まる。
西口一希『実践 顧客起点マーケティング』(2019年・翔泳社)と『顧客起点の経営』(2022年・日経BP)はどっちから読むのか、2冊とも要るのか。後者のレビューには「中盤以降は前作と一緒」「こちらは経営層向け」とあり、自分は商品企画で経営会議の資料も作る、という立場だと入口が決めにくい。著者も版元も読む順番そのものは明言していないので、決め手は本の性質と自分の立場の側にある。

この記事は要約ではなく、2冊を前にした人のための買い方の地図だ。著者がインタビューで語った2冊目の執筆背景、2冊を横並びにした書誌表(2019年・240ページと2022年・296ページ)、読者が「前作と一緒」と言う章がどこにあたるかの章題の対応、「難しい」と言われる中身の三分、Kindle版と音声版の実情(音声は2019年の本だけで、配信元ごとに別ナレーターで収録)、次に読む本を、版元の書誌と読者の声で整理する。当ブログは2020年8月に前者、2022年8月に後者のKindle版を購入している(購入当時 各1,000円・2,070円)。顧客ピラミッド・9セグマップ・N1分析といった手法の中身は扱わない。

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たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング 表紙

『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』

西口一希/翔泳社(MarkeZine BOOKS)/A5判240ページ(2019年4月8日・版元表記)/Kindle版はリフロー・265ページ表記・X-Ray有効/改訂版・文庫なし(2026年10月時点)

Amazonで見る(Kindle版)|紙の本を見る

目次

  1. 顧客起点マーケティングと顧客起点の経営はどっちから読むか|著者・版元は順番を明言していない。執筆背景と「経営者向けの実務書」
  2. 2冊の違いを表で見る|2019年・240ページと2022年・296ページ、X-Ray・音声版・刊行時の肩書
  3. 「中盤以降は前作と一緒」と言われる章はどこか|基礎編・応用編の章題の対応と、片方にしかない章
  4. 「難しい」の中身は3つに分かれる|経験者向けの密度・読みやすいが実践は別・業態の不一致
  5. Kindle版と音声版はどう違うか|両冊リフロー・17.0MBと25.5MB、音声版は2019年の本だけ2社別収録
  6. 次に読む本と関連記事|著書9冊の中の位置、ドラッカー・小倉昌男・ジョブ理論
  7. 買う前に確かめる4点|順番の材料・重なる位置・形・難しさの正体

顧客起点マーケティングと顧客起点の経営はどっちから読むか|著者・版元は順番を明言していない。執筆背景と「経営者向けの実務書」

著者・版元とも、2冊を読む順番は明言していない。確認できる範囲で著者が語っているのは、2冊目『顧客起点の経営』を「経営者向けにもまとめたほうがいい」と考えた背景と、日経ビジネスの連載を「マーケティングの知識がなくとも理解できるように再編」したこと(MarkeZine・2022年の著者インタビュー)。版元の日経BPは同書を「ベストセラー『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社)から3年」と続編の位置に置く。一方で前作を読んだ読者からは「中盤以降は前作と一緒」(ブクログ・2022年8月)という声が出る。つまり、マーケ実務の手元で使うなら2019年の『実践 顧客起点マーケティング』から、経営・企画の視点で全体像を先に押さえたいなら2022年の『顧客起点の経営』から、という立場別の入口が事実として見えてくる。本記事も裁定はせず、材料を並べるところまで。

順番を考える材料は、著者側と読者側に分かれる。

  • 著者が語る2冊目の執筆背景は2つMarkeZineのインタビュー(2022年)で西口氏は、前著が幅広い読者に手に取られる中で「経営層からの相談がすごく増えた」ことと、マーケターから「顧客起点マーケティングを実践したいが経営レベルの理解に至らない」という悩みを多く聞いたこと、の2つを挙げ、「この考え方を経営者向けにもまとめたほうがいい」と考えたと語っている。
  • 2冊目は「マーケティングの知識がなくとも理解できるように再編」同じインタビューで、書籍化に先立って日経ビジネスの本誌と電子版に連載し、その反響を元に「マーケティングの知識がなくとも理解できるように再編」したと述べている。2冊目が前提知識を要求しない設計だという、著者側の発言。
  • 「はじめに」の自己規定は「経営者向けの実務書」青森大学付属総合研究所紀要の書評(中村和彦氏・2023年9月)が『顧客起点の経営』の「はじめに」から引く一節に「本書は、経営者向けの実務書と言えよう」とある。MarkeZineの書評(2022年7月)も「経営者向けの実務書ですが、マーケティングの現場で日々業務を担う読者の方々にとっても」と、経営者以外の読者を排除しない書き方をしている。
  • 読者側は「前作と一緒」と「経営者向け版」に割れるブクログでは「中盤以降は前作と一緒の内容」(だぶ氏・2022年8月)、「被る部分も多い」(Ryota Ozaki氏・2023年12月)、「9セグメントの経営者向け版」(ヒラハラ氏・2022年11月)、「著者の「顧客起点マーケティング」はマーケ担当者向け、こちらは経営層向けの1冊」(とっこ氏・2025年6月)。Yahoo!ショッピングのレビュー(2022年9月)は前作を先に読んだうえで「基本同じような内容ですが、より経営者目線の広い視点から書かれているように感じました」と書く。

もうひとつ見落としやすいのは、2冊の間に3年あり、著者の肩書が変わっていること。2019年の刊行時はスマートニュースの執行役員、2022年の刊行時はStrategy Partnersの代表で、前者は実務者として、後者は経営助言者としての本という立ち位置の差と重なる。読む順番の答えは著者の中にはなく、「自分は今どちらの席に座っているか」で決まる、というのがここまでの材料から言えること。

2冊の違いを表で見る|2019年・240ページと2022年・296ページ、X-Ray・音声版・刊行時の肩書

実践 顧客起点マーケティング 書影

どんな本かは版元の言葉で押さえておく。翔泳社の紹介文は『実践 顧客起点マーケティング』を「著者の西口一希氏が確立したフレームワークの理論と実践を全公開します」とし、MarkeZine BOOKSのキャンペーンページは「現場で売上と利益の責任を背負ったビジネスパーソンにとって実務に“使える”1冊です」と対象を明示する。日経BPは『顧客起点の経営』を「200社を超す企業の経営者に助言してきた西口一希氏による経営論」と呼び、Amazonの内容紹介には「楠木建氏推薦」の表記がある。片方は「現場」、片方は「経営論」。版元の一言が、そのまま2冊の性格の違いになっている。

項目実践 顧客起点マーケティング顧客起点の経営
正式書名たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング企業の「成長の壁」を突破する改革 顧客起点の経営
版元・発売日翔泳社(MarkeZine BOOKS)・2019年4月8日日経BP・2022年6月24日
紙の頁数(版元表記)A5判・240ページ296ページ
Kindle「本の長さ」・容量265ページ・17.0MB314ページ・25.5MB
Kindleの仕様リフロー・X-Ray有効リフロー・X-Ray有効
構成序章+第1〜5章+おわりに(各章末にcolumn 1〜5)はじめに+序章+第1〜7章+対談
音声版あり・2社別収録(audiobook.jp 2020年2月/Audible 2022年4月)なし(2026年10月時点)
刊行時の著者肩書スマートニュース 執行役員Strategy Partners 代表
Amazon評価(2026年10月1日時点)4.2・999件4.3・330件
版・派生改訂版・文庫なし。マンガ版にあたる『マンガでわかる 新しいマーケティング』(池田書店・2021年)あり改訂版・文庫なし。繁体字版(2024年)あり
成り立ちMarkeZine(2023年7月)で総印刷数5万部。翔泳社が2020年11月19〜25日に全ページを無料公開した(会員登録制・終了済み)日経ビジネスの連載「顧客起点の経営改革」全8回(2021年)が原型
当ブログの所持版Kindle版・2020年8月8日購入Kindle版・2022年8月25日購入(発売2か月後)

頁数は版元表記とKindleの「本の長さ」で数字が違うので、表では別々に置いた(差の理由には踏み込まない)。読者規模は前者が大きく、Amazonの件数で約3倍。ブクログでも前者は2026年に入ってから新しい感想が付き続けている(2026年3月・5月・8月)。5万部という数字はMarkeZineが2023年7月に報じた時点のもので、翻訳については著者略歴(ブクログ・2021年8月現在)に「台湾、韓国、米国でも翻訳される」とある。

無料公開の件は補足しておくと、翔泳社は2020年11月19日から25日までの1週間、会員登録制で『実践 顧客起点マーケティング』の全ページを公開した(翔泳社プレスリリース・MarkeZine告知)。当ブログの購入はその3か月前の8月。現在は終了しているので、いま読むなら購入か図書館ということになる。

「中盤以降は前作と一緒」と言われる章はどこか|基礎編・応用編の章題の対応と、片方にしかない章

顧客起点の経営 書影

「前作と一緒」という感想がどこで生まれるかは、章題を並べると見当がつく。『実践 顧客起点マーケティング』の第2章と第3章には【基礎編】【応用編】の見出しが付き、『顧客起点の経営』でも第3章・第4章が「基礎編」、第5章が「応用編」。章題に含まれる語も、前者の「顧客ピラミッド」「9セグマップ」に対して後者は「WHO & WHAT」「カスタマーダイナミクス」「9セグズ」と、同じ系統の名前が並ぶ。ここでは章題が対応する、というところまでにとどめ、中身が同一かどうかは断定しない(手法の中身も扱わない)。

実践 顧客起点マーケティング(2019)顧客起点の経営(2022)位置関係
序章 顧客起点マーケティングの全体像はじめに 顧客が見えなくなると、事業成長は止まる/序章 経営が顧客を見失う理由/第1章 顧客起点の経営改革の全体像/第2章 経営の視界に「顧客の心理と行動」を組み込む後者は前半に前提が厚い(ブクログ CHICKING氏「前半で…前提がみっちり書いてあります」)
第1章 マーケティングの「アイデア」とN1の意味―前者にだけある導入章
第2章【基礎編】顧客ピラミッドで基本的なマーケティング戦略を構築する(5節・最多)第3章 基礎編 収益を生み出す「顧客戦略(WHO & WHAT)」の立案/第4章 基礎編 継続的に収益を高める「カスタマーダイナミクス」「基礎編」同士。章題が対応する
第3章【応用編】9セグマップ分析で販売促進とブランディングを両立する第5章 応用編 NPIを加えた「9セグズ カスタマーダイナミクス」「応用編」同士。章題が対応する
第4章【ケーススタディ】スマートニュースのN1分析とアイデア創出(4節)―前者にだけある章
第5章 デジタル時代の顧客分析の重要性/おわりに第6章 顧客起点の経営改革とビジョン/第7章 ドラッカーを顧客起点で読み解く/対談 顧客起点の経営の実践第7章と対談は後者にだけある

この対応表から読み取れるのは、後者の「中盤」=第3〜5章が前者の第2〜3章と同じ「基礎編・応用編」の看板を掲げている、ということ。前者を読んだ人が「5segs、9segsというマーケティングのフレームワークは「顧客起点マーケティング」に記載されている内容と重複するので、新たな学びは小さかった一方で、経営とマーケティングを紐付けた関係図が印象的であった」(ブクログ だいき氏・2023年6月)と書くのは、この位置と整合する。逆に、後者から入った初心者側の証言もある。noteのShisui281氏(2023年3月・マーケティング初心者と自称)は「難しいマーケティング専門用語が使われていない」「2回目に登場するときは(再掲)という注釈が入っておりわかりやすい」と、再掲を前提にした作りを評価している。同じ「重なり」が、既読者には既視感、初心者には親切さとして映る。

片方にしかない部分も確認しておく。後者にだけあるのは、序章から第2章までの前提部分、第6章のビジョン、第7章「ドラッカーを顧客起点で読み解く」、末尾の対談。青森大学紀要の書評は「序章と対談とで7つの章を巧く挟み込んだ、言わば“サンドイッチ”」と構成を評し、ブクログのshu1rev氏(2024年7月)は「ドラッカーが出てきたときは、最新の話のなかでドラッカー?とちょっとびっくりした」と書く。第7章は日経ビジネス連載の第6回「ドラッカーとポーター」が原型と推定できるが、章題と連載題の対応からの推定にとどめる。第3章が本書の中で最も厚いという点はnote記事(zum_ism氏・2026年7月)による。ドラッカー側の入口は別記事にまとめてある。

関連記事: ドラッカーはどれから読む?挫折しない順番を蔵書4冊で解説

前者にだけあるのは、第1章の導入、第4章のスマートニュースを題材にしたケーススタディ4節、各章末のcolumn、そして「おわりに」。ブクログのsaaa14010氏(2019年10月)は「おわりに、に書かれていた西口さんの失敗経験がとても印象的」と書いており、本文の外側に著者の経験談が置かれている。第3章の応用編で混乱し第4章のケースで回収される、という読み方はMarkeZineのキャンペーンページの読者の声にもあり、「最初は9セグマップの話などとても難しく…頑張って読んでいたら、それは伏線になっていて、最後に全部つながってくる」という趣旨。前者の第4章は、後者には対応物がない。

「難しい」の中身は3つに分かれる|経験者向けの密度・読みやすいが実践は別・業態の不一致

「難しい」という評は『実践 顧客起点マーケティング』の側に集中し、『顧客起点の経営』の側には「同じ話」という評が集中する。前者のレビューを読み込むと、難しさの中身は文章の難解さではなく、3つに分かれる。

  • 1. 経験者向けの密度(1回では足りない)ブクログのnaoyuki氏(2021年2月)は「マーケティングを知りたい人には不向き。すでに実践していて経験を積んだ方にとっては最高の良書だと思う」「読み返す勇気はない」。key氏(2022年4月)は「1度では全然理解できないと感じた。自分なりに本の内容を整理し、分解しないと理解が追いつかない。そのくらい内容の濃い本」。ひな氏(2024年4月)は「約2年後に読み返してこの本の価値に改めて気づく」と、1回目と2回目の読了日を併記している。うさまる氏(2024年8月)は「ある程度の規模を持つ企業マーケターの実務に直結するかも」と読者層を絞る。
  • 2. 読みやすいが、実践は別の話ごーごー氏(2022年5月)は「非常に読みやすかった。具体的な事例とともに解説があり、知識のない人でも読めると思う。ただこの手法が日本ではまだ一般的でないことと、実践できるかどうかはまた別の話だなと感じた」。su氏(2025年12月)は「マーケティングに詳しくなくてもわかりやすく、ビジネス読み物としても大変面白い」、みんく氏(2024年9月)は「マーケティング初心者にとってはとても勉強になる本」。「読める」と「使える」は別だという整理。
  • 3. 自分の業態に合わないkodyhase氏(2026年3月・コンサル業界)は「基本的には既存商品のコミュニケーション戦略の本と理解した。自分のニーズと結び付けることができなかった」。pooh氏(2024年3月)は「どちらかと言うと繰り返し利用される、購買されるサービス向けかと思い」。一方でおても氏(2026年5月)は「この手の本はBtoC向けの印象が強く、BtoBで1顧客を深耕していくような場合には適用しにくいことも多いが」と断りつつ、考え方はソリューション提案にも活かせると書く。BtoB・コンサル・単発購買の読者で評価が割れる。

版元の言葉と並べると、ズレが見える。Amazonの内容紹介(出版社提供)には「初心者でもフレームワークを使えますか?」という問いに「はい」と答え「初心者でも実践可能です」とする記述があり、対象読者に「一般的な調査からヒットを生み出せず悩んでいるマーケター」「自社ブランドのターゲット顧客を可視化・定量化したい経営者」を挙げる。読者側の「不向き」「1度では理解できない」は、この「初心者でも」と正面から食い違う。効果の有無を当ブログが判定することはできないので、版元コピーと読者評価の両方を置いておく。

書名も難しさの一因になっている。ブクログのGINNOJI氏(2020年8月)は「タイトルから「1人を深く分析する」とかんがえてしまいがちですが」と、「たった一人」という語が誤読を生むと指摘し、zxocgjk氏(2022年7月)は「定義や言葉の使い方の揺れなど若干気になる」「上記出てくるいろんなワードは全て筆者の造語」と用語面の引っかかりを書く。Amazonの星3レビュー(2019年9月)にはキャズム理論の扱いへの指摘がある(当ブログは該当箇所未確認)。冒頭に読み方のレクチャーがある、という点はBookLiveのレビュー「冒頭に、この順番に読むとこういう風に理解できますよ、という読み方のレクチャーを入れてくれている」による。

著者側もこの難しさを認識していたことが、後の動きから読める。Marketing Native(2023年4月)の著者インタビューの前置きには「これまでの著書がマーケターを中心に好評を博してきたものの、一部のマーケティング初心者にとっては少々難しさを感じるところもあったようです」とあり、著者は2023年2月に入門書『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』(日本実業出版社・四六判272ページ)を出している(当ブログは非所持のため書誌のみ)。2冊とも荷が重いと感じる人には、著者自身が用意した3冊目の入口があるということ。なお「顧客起点マーケティングカレッジ」はM-Force社の講座名で、本書とは別物。

Kindle版と音声版はどう違うか|両冊リフロー・17.0MBと25.5MB、音声版は2019年の本だけ2社別収録

Kindle版はどちらもリフローで、X-Rayが有効。目立つのはファイルサイズで、『実践 顧客起点マーケティング』が17.0MB、『顧客起点の経営』が25.5MBと、文字中心のビジネス書としては大きく、Amazonの商品ページには「ファイルサイズが大きいため3G接続ではダウンロード不可」の注記が両方に付く。図版が多い本の間接証拠と言ってよく、ブクログのフラビオ氏(2022年11月)も前者を「フレームワークや図表も出し惜しみなく繰り出されている」と書く。図版の多い本をスマホの小さな画面で読むか、タブレットかPCかは、端末とアプリの選び方の問題になる。

関連記事: ビジネス書を読むならどの電子書籍アプリ?目的別に徹底比較

音声版は2019年の本だけにあり、しかも2社で別収録になっている。

配信元配信開始ナレーター長さ・付属
audiobook.jp2020年2月20日喜多幡優6時間29分・添付資料44点
Audible2022年4月22日國分和人5時間54分・完全版表記

同じ本で収録が2年ずれ、ナレーターも長さも違う(時間は各社の表示のまま)。audiobook.jp版に添付資料が44点付いているのは、図版の多さの裏返しでもある。『顧客起点の経営』は2026年10月時点で音声版がなく、Audibleの著者ページに並ぶのは『顧客起点マーケティング』と『マーケティングを学んだけれど』の2作。通勤で聴く前提なら、選べるのは2019年の本だけ、ということになる。2社のどちらで聴くかは別記事で比べている。

関連記事: オーディオブック比較|Audibleとaudiobook.jpの違いと選び方

当ブログの所持版は、前者が2020年8月8日購入のKindle版(購入当時1,000円)、後者が発売2か月後の2022年8月25日購入のKindle版(購入当時2,070円)。どちらも改訂版・文庫版は出ておらず(2026年10月時点・国立国会図書館の書誌)、いま買っても同じ版になる。前者には2021年のマンガ版にあたる本が、後者には2024年の繁体字版がある。

次に読む本と関連記事|著書9冊の中の位置、ドラッカー・小倉昌男・ジョブ理論

「西口一希の本」で探すと、2019年から2025年までに9冊の著書が並ぶ(国立国会図書館の書誌。1冊は足立光氏との共著)。2019年4月『実践 顧客起点マーケティング』、2020年12月『アフターコロナのマーケティング戦略 最重要ポイント40』(共著・ダイヤモンド社)、2021年9月『マンガでわかる 新しいマーケティング』(池田書店)、2022年6月『顧客起点の経営』、2023年2月『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』(日本実業出版社)、2024年12月『ブランディングの誤解』(日経BP)と『ビジネスの結果が変わるN1分析』(日本実業出版社)、2025年5月『マーケティング手法大全』(翔泳社)、2025年10月『良い売上、悪い売上』(翔泳社)。ほぼ年1冊のペースで、「顧客起点」を書名に冠するのは本記事の2冊だけ。当ブログが所持しているのはその2冊で、ほかは書誌のみ。

著者の経歴は版元・Amazonの著者欄の範囲で、P&G、ロート製薬、ロクシタンジャポンを経てスマートニュース、2019年にStrategy Partnersを設立して代表取締役、M-Forceの共同創業者。この経歴のうち「スマートニュース」の時期に前者が、「Strategy Partners」の時期に後者が書かれている。

2冊の外に広げるなら、接点は3方向にある。ひとつは『顧客起点の経営』第7章のドラッカーで、これは前節で挙げた別記事へ。もうひとつは「顧客起点」という言葉そのもので、当ブログの小倉昌男『経営学』の記事には、宅急便を生んだ経営を指す一般的な意味で「顧客起点」という語が出てくる。西口氏の用語と同じ意味ではないが、経営の側から顧客を見る本として並べて読める。

関連記事: 小倉昌男 経営学は古い?宅急便を生んだ経営の教科書

三つめは「一人の顧客を深く理解する」という近縁のテーマで、クリステンセンの『ジョブ理論』が並走する。書名の「たった一人」が誤読を生む、という前節の話とも地続きだ。

関連記事: ジョブ理論は冗長?原著と完全理解読本の使い分け

『顧客起点の経営』の版元は「大企業からスタートアップまで、実名を含む多数の事例を掲載」とし、紀伊國屋書店の内容説明には「注目企業、スタートアップのケーススタディーを掲載」とある。スタートアップ側の本の並べ方は別記事にした。

関連記事: スタートアップの名著おすすめ|起業の時間軸で読む6冊の順番

同じ「同著者の2冊、どっちから」の形では、芹澤連『戦略ごっこ』と『“未”顧客理解』の組み合わせも当ブログで扱っている(記事末尾の関連記事から)。

買う前に確かめる4点|順番の材料・重なる位置・形・難しさの正体

  • 順番は著者・版元が明言していない著者が語るのは2冊目の執筆背景(経営層の相談増と、マーケターの「経営レベルの理解に至らない」悩み)と「マーケティングの知識がなくとも理解できるように再編」したこと。版元は「から3年」の続編扱い、「はじめに」の自己規定は「経営者向けの実務書」。マーケ実務なら2019年の本から、経営・企画の視点なら2022年の本から、という入口が立場別に見える。
  • 重なると言われるのは「基礎編・応用編」の位置2019年の本の第2〜3章と2022年の本の第3〜5章は、章題に同じ【基礎編】【応用編】の看板がある。2022年の本にだけあるのは前半の前提・第6章のビジョン・第7章のドラッカー・末尾の対談、2019年の本にだけあるのは第4章のスマートニュースのケースと各章末のcolumn。
  • 形はKindleが2冊、音声は1冊だけ両冊リフロー・X-Ray有効・17.0MBと25.5MBの大容量。音声版は2019年の本のみで、audiobook.jp(2020年・喜多幡優・6時間29分)とAudible(2022年・國分和人・5時間54分)の別収録。改訂版・文庫版はどちらもない。
  • 「難しい」の正体は密度・実践・業態の3つ経験者向けの密度(1回で足りない)、読みやすいが実践は別、BtoB・コンサル・単発購買との不一致。版元の「初心者でも実践可能」とは食い違い、書名の「たった一人」が誤読を生むという指摘もある。2冊とも重いなら、著者が2023年に出した入門書がある。

上司に「読んどいて」と言われて2冊の前で止まっている人へ。順番の答えは本の中にはなく、どちらの席で読むかで決まる。現場で数字の責任を持つ立場なら2019年の本、経営会議の資料を作る立場なら2022年の本、という入口がここまでの材料から見える。もう一冊は「基礎編・応用編」の重なりを織り込めばよい。その判断に必要な材料は、ここまでで揃っているはず。

書籍の価格は購入当時のものであり、現在の価格とは異なります。

実践 顧客起点マーケティング 表紙顧客起点の経営 表紙

『実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社)/『顧客起点の経営』(日経BP)

実践 顧客起点マーケティングをAmazonで見る(Kindle版)|顧客起点の経営をAmazonで見る(Kindle版)

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