私はどうして販売外交に成功したかは古い?版の年表と似た書名の本

「名著と聞くけど、戦後すぐの営業本って今読んでも古くない?」
フランク・ベトガー『私はどうして販売外交に成功したか』は古いのか。先に答えると、刊行は古い。国立国会図書館には1953年刊の記録があり、いま書店で買えるのは1982年の新装版だ。日本語訳は土屋健訳の1種類だけで、選ぶときの違いは「訳」ではなく「版」にある。版の年表と、書名がよく似た別の本の見分け方を書誌から整理する。
使うのは国立国会図書館(NDL)の書誌、版元ダイヤモンド社の紹介、ストアの商品情報など、買う前に確かめられる事実だけ。営業の技法の中身や要約は扱わない。当ブログは2024年10月にこの本のKindle版を購入している。
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目次
結論:刊行は古い本、訳は1種類で違いは版
刊行年で見れば、はっきり古い本だ。NDLには土屋健訳・ダイヤモンド社の1953年刊の記録があり、現在の版は1982年8月の新装版。原書はアメリカで1940年代後半に出たとされる。
一方で「どの訳を選ぶか」で迷う必要はない。NDLの書誌で確認できる、この原書の日本語訳は土屋健訳の系統だけで、新訳や別の訳者による版は見つからなかった。違いがあるのは版のほうで、旧版と1982年の新装版ではページ数や判型が異なる。
ただし、書名が似た別の本がある。箱田忠昭訳『私はこうして全米ナンバーワンの営業マンになった』は、ベトガーの2冊目の著書の訳で、この本の新訳ではない。詳しくは後の節で比べる。
版の年表:1953年から1982年新装版まで
NDLサーチに残る土屋健訳の所蔵記録を、刊年順に並べた。
| 刊年 | ページ・判型 | 書誌から読めること |
|---|---|---|
| 1953年 | 294ページ・19cm | 目次の冒頭は「本書に寄せる感想 デール・カーネギー」「訳者のことば 土屋健」。「第一部」からの部構成 |
| 1955年 | 284ページ・19cm | 北海道立図書館の所蔵記録。刷か版かの別は不明 |
| 1964年 | 220ページ・18cm | シリーズ「Executive books」の1冊。目次は番号つきの章立て |
| 1979年 | 不明 | 公共図書館の所蔵記録のみ |
| 1982年8月 | 196ページ・19cm | 「新装版」。解説は猪谷千春。現在流通している版で、Kindle版もこの版がもと |
ここで一つ、資料どうしの食い違いがある。版元のダイヤモンド・オンラインやAmazonの内容紹介は「日本での刊行は1964年」「1964年の初版以来」と書いている。ところがNDLには、それより前の1953年刊(294ページ)の土屋健訳が所蔵されている。
1964年はExecutive books版として出た年とも読めるが、当ブログでは確かめきれていない。初版がどちらかは断定せず、「版元は1964年刊行と紹介/NDLには1953年刊の記録もある」と両方を並べておく。
買う側から見れば、選択肢はほぼ1つに絞られる。いま新品で手に入るのは1982年の新装版(紙の単行本とKindle・楽天Kobo)で、旧版は図書館や古書で出会う本だ。Amazonの紙版の商品情報には「27版」とあり、新装版になってからも版を重ねてきたことがわかる。
どんな本か:書誌とカーネギーとの関係
著者のフランク・ベトガー(1888-1981)が、販売の仕事で失敗から立ち直るまでを書いた本。NDLの書誌にある原タイトルは How I Raised Myself from Failure to Success in Selling で、直訳すれば「販売の仕事で、私はどうやって失敗から成功へ這い上がったか」となる。
版元の書籍紹介は、この本の中身を「27の原則」と表現している。原則の一つひとつはこの記事では扱わない。読むかどうか決める材料としては、次の書誌のほうが役に立つはずだ。
- 分量紙の新装版は196ページ(19cm)。Kindle版の「本の長さ」は213ページ。
- ISBN新装版はISBN-10が4478540098、ISBN-13が978-4-478-54009-1。紙版を探すときの目印になる。
- 解説新装版には猪谷千春氏の解説がつく(NDL・版元告知)。
- 旧版の章立て1964年版の目次は「1 自分の仕事に情熱を持て!」「2 商売はやり方ひとつ」と始まる。現行の新装版の目次は一次資料で確認できていない。
デール・カーネギーとの関係も、書誌から読める。1953年版の目次には「本書に寄せる感想 デール・カーネギー」、1964年版には「本書の発刊に寄せて デール・カーネギー」とある。Amazonの内容紹介(土井英司氏)も、原著はカーネギーの存命中に書かれ、前書きをカーネギーが担当したと紹介している。
Amazonのレビューには「人を動かすを読まれた方は」と、『人を動かす』と並べて語る声もある。カーネギーの本を先に読んだ人が次に手に取る1冊、という位置づけで読まれているようだ。
関連記事: 人を動かすはどんな本?完全版と旧版の違いも整理
似た書名の別の本に注意
「私はどうして」「私はこうして」で始まる営業本は、ベトガーの名前で複数見つかる。ところが原書が違う。NDLの原タイトル注記で並べると、次のようになる。
| 邦題 | 訳者・版元・刊年 | 原書 |
|---|---|---|
| 私はどうして販売外交に成功したか(この記事の本) | 土屋健・ダイヤモンド社・1982年新装版 | 1冊目 How I Raised Myself from Failure to Success in Selling |
| 私はこうして全米ナンバーワンの営業マンになった | 箱田忠昭・イースト・プレス・2007年 | 2冊目 How I Multiplied My Income and Happiness in Selling |
| 私はどうしてNo.1営業マンになったか | 箱田忠昭・イースト・プレス・2009年 | 2冊目(NDLが前の書名を「その他のタイトル」に記載しており、改題版と読める) |
| 私はどうして販売によって富と幸福を得たか | 中原周作・ダイヤモンド社・1955年ほか | 2冊目 |
とくに紛らわしいのが箱田忠昭訳の2冊。書名の形が似ていて、刊行も2000年代と新しいので、「販売外交に成功したか」の新訳と受け取りやすい。けれど原書は2冊目の著書で、中身は別の本だ。1冊目を読みたい人が、新しさにつられて取り違えないよう気をつけたい。
もう一冊、NDLの要約で「全米一の営業マン、フランク・ベトガーの「もう一冊」の名著」と紹介されている本もある。池田恒雄訳『熱意は通ず : フランクリンの富と福の原理』(土曜社・2014年)で、原書は Benjamin Franklin's Secret of Success and What It Did for Me。こちらも別の著書だ。
「古い」と感じる点と形態の選び方
古さの印象は、まず書名から来る。「販売外交」は訪問販売や外交員を指す古い言い回しで、今の営業の現場ではまず使われない。
中身の古さについては、読者の評価が割れている。Amazonのレビューには「少し古い部分もありますが」という声がある一方、「読みやすくて素晴らしい」「シンプルに熱い本」という感想も並ぶ。紙版の評価は4.3(439件、2026年10月15日時点)。時代背景の古さを承知のうえで読まれている、というのが件数から見える傾向だ。
逆に、オンライン商談やインサイドセールスなど、いまの営業の型そのものを知りたい人には向かない。原書は1940年代後半のアメリカで出たとされる本なので、現代の手法は新しい営業本で補うほうが早い。
では、どの形で手に入れるか。新品で選べるのは新装版の3つの形態になる。
| 形態 | 書誌 | リンク |
|---|---|---|
| Kindle版 | 213ページ・X-Ray対応(当ブログ所持) | Amazonで見る |
| 楽天Kobo版 | 訳者 土屋健・ダイヤモンド社 | 楽天Koboで見る |
| 紙の単行本 | 196ページ・19cm | Amazonで見る |
200ページ前後の薄い本なので、通勤中に電子版で少しずつ読む形とも相性がいい。『人を動かす』などカーネギーの本と続けて読むなら、同じストアでそろえておくとライブラリで並べて行き来しやすい。どちらを先に読むか迷っている人には、カーネギー2冊の順番を整理した記事もある。
関連記事: 人を動かすと道は開ける、どっちを先に読む?
電子版はストアのセールやクーポンで条件が変わることがある。ストアごとの傾向は別の記事で比べている。
関連記事: 電子書籍のセール・クーポンが多いアプリ徹底比較|お得に買う3選
まとめ|古いのは刊行年、選ぶのは版
- 古さNDLには1953年刊の記録があり、版元は1964年刊行と紹介している。現行は1982年の新装版。中身の古さはレビューでも意見が分かれる。
- 訳日本語訳は土屋健訳の1種類。訳の違いで迷う必要はない。
- 版新品で手に入るのは1982年新装版(紙196ページ・Kindle・楽天Kobo)。旧版は図書館や古書で出会う本。
- 似た書名『私はこうして全米ナンバーワンの営業マンになった』は2冊目の著書の訳で、別の本。
同じ営業の定番書でも、現代の営業を扱う本と並べると、刊行年の差がよくわかる。新しい営業本と読み比べたい人は、こちらも参考にしてほしい。
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