DIE WITH ZEROは富裕層向け?批判込みで読む価値

「富裕層すぎて、共感しづらい」。
『DIE WITH ZERO』のレビューを調べると、必ずこの種の批判に行き当たります。ほかにも「日本の年金制度を踏まえると現実味が薄い」「当たり前の内容で冗長」。ベストセラーなのに、否定的な声がはっきり多い本です。買うかどうか迷って、批判レビューを読み込んでいる人も多いはずです。
筆者はKindle版を購入し、読了しています。先に結論を言うと、これらの批判は一部当たっていて、一部は本の主張とすれ違っています。この記事では代表的な批判3つを順に検討し、どんな人なら読む価値が残るのかを見極めます。
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目次
買う前に、批判を先に検討する
この本への批判は、レビューを横断すると大きく3つに集約されます。
- 富裕層向けではないか「富裕層すぎて共感しづらい」「結局若いうちに運良く稼げた人向け」という声。
- 日本では非現実的ではないか「日本の社会保障制度や年金制度を踏まえると現実味が薄い」という声。
- 内容が薄いのではないか「当たり前の内容」「目新しい要素がなく、話が冗長」という声。
おすすめ記事の多くは要約と称賛で構成されていて、この3つに正面から答えてくれません。順に見ていきます。その前に、前提となる本の骨格だけ短く押さえます。
DIE WITH ZEROはどんな本か
著者のビル・パーキンスは、元ウォール街のエネルギートレーダーで、現在はコンサルティング会社BrisaMax HoldingsのCEO。日本語版は児島修訳でダイヤモンド社から2020年9月に刊行された、四六判280ページの本です。
主張はタイトルに凝縮されています。ゼロで死ね——つまり、お金を使い切らずに死ぬのは、そのお金で得られたはずの経験を取り逃がすことだ、という考え方。本書はこれを「9つのルール」に分けて展開します。鍵になる概念は2つあります。
- 記憶の配当経験はその瞬間だけで終わらず、思い出すたびに喜びを生み続けるという考え方。早く経験するほど「配当」を受け取る期間が長くなる。
- タイムバケット人生をいくつかの時間の区切りに分け、「その時期にしかできない経験」をどの区切りで実行するか割り当てる枠組み。
要するに、貯め方の本ではなく「使い時」の本。ここを押さえると、批判の当たり外れが判定しやすくなります。
批判1「富裕層向け」——金額ではなく配分の本
この批判は半分当たっています。著者は元トレーダーで、登場する事例のスケールは確かに大きい。豪華な旅行や早期リタイアの話に「自分とは違う世界だ」と感じる読者がいるのは自然なことです。事例に共感できないまま280ページを読み進めるのは、正直つらいでしょう。
一方で、本の中心にあるのは金額ではなく配分の議論です。手元の資金がいくらであれ、「どの時期に・何の経験に・どれだけ回すか」という問いは共通で、記憶の配当もタイムバケットも所得の多寡を前提にしていません。事例の派手さと原理の汎用性を切り分けて読めるかどうかが、この本の分かれ目になります。
批判2「日本では非現実的」——制度の本ではない
「米国の本だから日本の年金や社会保障とは前提が違う」という指摘も、事実としてはそのとおりです。本書に日本の制度に合わせた資産計画の話は出てきません。文字どおり「資産をゼロにする計画書」を期待して読むと、肩透かしになります。
ただ、この本の読みどころは制度設計ではなく、「使い時を逃すな」というメッセージの方にあります。体力や健康が必要な経験には期限があり、先送りするほど選択肢が減っていく——この部分は制度と関係なく成立する話です。制度前提の綿密なシミュレーションを求める人には向かず、「貯めることが目的化していないか」を点検する思考の道具として読む人には効く。評価が割れる理由はここにあります。
批判3「当たり前で冗長」——280ページの読みどころ
主張がシンプルなのは事実です。「ゼロで死ね」という結論は最初の数十ページで分かり、残りはその肉付けが続きます。「当たり前の内容」「冗長」という感想は、結論だけを知りたい読者ほど強くなるはずです。
読み方には工夫の余地があります。この本の価値は結論そのものではなく、記憶の配当とタイムバケットという2つの概念にあります。先に本書の骨格である9つのルールの見出しに目を通し、この2つの概念が出てくる章を丁寧に、事例章は流す——280ページを均等に読まないのが、冗長さに折れないコツです。シンプルな主張を1冊かけて体に入れる本だと構えておくと、印象は変わります。
向く人・向かない人と、対で読みたい1冊
批判3つの検討を踏まえて、整理します。
| 向く人 | 向かない人 |
|---|---|
| 貯金はできているが、使うことに罪悪感がある | 日本の制度に沿った具体的な資産計画を知りたい |
| 「いつかやりたいこと」を先送りし続けている自覚がある | 派手な事例に共感できないと読み進められない |
| 貯める本を読んできて、逆側の視点が欲しい | 結論を知ったら肉付けは不要だと感じる |
そしてもうひとつ。この本は「使え」の側に立つ一冊なので、単独で読むとバランスを欠きます。逆側の「貯めろ」を説く『サイコロジー・オブ・マネー』と対で読むべきだ、という整理が読者の間で既にあり、実際この2冊は同じダイヤモンド社・同じ児島修訳です。対にする読み方は次の記事で扱っています。
関連記事: サイコロジー・オブ・マネーはどんな本?貯める側の心理学
批判を知ったうえで、それでも「使い時」を考え直したい人には、読む価値のある1冊です。逆に、批判のどれかが自分に強く当てはまると感じたら、見送るのも正しい判断だと思います。

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