ウォール街のランダム・ウォーカーは難しい?500ページの読む順番

ウォール街のランダム・ウォーカーは難しい?500ページを崩す読む順番

「投資の素人が読み通すには、なかなか手強かった」
『ウォール街のランダム・ウォーカー』のレビューには、この手の言葉が並びます。投資の名著として何度も名前が挙がるのに、500ページ超の分厚さを前に、買ったままKindleライブラリの奥で眠らせている人が少なくない本です。

読みかけで止まったのではなく、そもそも始めてすらいない。この状態が続くと、だんだん「自分に投資の素養がないから手が出ないのでは」という気分になってきます。でも、レビューを丁寧に読み込んでいくと、どうもそれは違うらしい。この記事では、この本の何が読者を止めているのかを分解し、どういう順番なら500ページを崩せるのかを設計します。

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ウォール街のランダム・ウォーカー 原著第12版 表紙

『ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第12版〉株式投資の不滅の真理』

バートン・マルキール/日本経済新聞出版

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「手強い」と言われる理由は、あなたではなく本の構造にある

先に結論を書きます。この本が読めないのは、読者の理解力の問題である前に、本の作りがそうなっているからです。レビューを横断して読むと、止まる原因はだいたい3つに収束します。

止まる原因具体的には
とにかく分量が多い日本語版は500ページ超。最新の第13版は512ページある。文字サイズも大きくはない
翻訳書特有の読みにくさ原著は米国の読者に向けて書かれている。一文が長く、言い回しが硬いと感じる人が多い
理論の検証にページを使う「何をすればいいか」より「なぜそう言えるのか」の論証が中心。データと研究の紹介が長い

3つ目が一番大きいと思います。この本の主張自体は、実はそれほど複雑ではありません。市場は効率的であり、個人が市場を出し抜き続けるのは難しい、という一貫した論旨です。ではなぜ500ページも必要なのか。主張そのものではなく、その主張を支える証拠を積み上げることに大半のページが使われているからです。

つまり、結論を知りたくて読み始めた人は、最初の100ページで「まだ結論に着かない」と感じる。ここが挫折ポイントになります。読書メーターやブクログのレビューでも、「500ページを超すし、分量も多い。理論的な部分に多くのページが割かれているので、初心者であれば挫折してしまいそう」という趣旨の指摘が繰り返し出てきます。

翻訳についても、「洋書の翻訳ってやっぱり読みづらい」と率直に書いているレビューがあります。これは本の欠陥というより、翻訳書を読むときに毎回ついてまわる摩擦です。同じ摩擦は他の名著でも起きます。

関連記事: 7つの習慣は分厚くて挫折する?電子書籍でやり直す読み方

一方で「とても読みやすい」という声もある|難易度が割れる理由

ここで一度、逆側の声も見ておきます。難しいという評価だけを並べると、この本を不当に遠ざけることになるからです。

  • 「読みにくいことはない」という評価ある読者は、読破の難易度はその人の投資の素養によると書いています。経済学部で学んだ経験があれば内容はすらすら入ってくる、という指摘です。
  • 数式は抑えられている硬派な内容のわりに数式はほとんど使われず、グラフや表が中心。著者は各章の冒頭で「この章ではこういう話をする」と予告してくれる、という読み方の助けになる指摘もあります。
  • 読み物として面白い部分があるチューリップ・バブルからIT バブルまでの投機の歴史を扱う部分は、理論パートと違って読み物として楽しめるという声が複数あります。

評価がここまで割れるのはなぜか。答えははっきりしていて、前提知識の量で体感難易度が変わる本だからです。市場や統計の基本的な考え方に触れたことがあるかどうかで、同じページの重さがまるで違う。

この事実は、積んでいる側にとってはむしろ朗報です。読めないのは能力の問題ではなく、順番の問題である可能性が高い。そう捉え直せます。

開けない理由は、全部読むものだと思っているから

この本の積まれ方には特徴があります。途中で挫折したのではなく、着手そのものをしていない。「まとまった時間が取れたら読もう」のまま何年も経っている、という止まり方です。

なぜそうなるのか。理由を言語化すると、はっきりしています。この本を開くことが、500ページを頭から通読するという約束をすることだと思っているから。約束が重すぎて、着手の日が永遠に来ないのです。

本は冒頭から読むもの、という前提は間違っていません。著者は読者が理解しやすいように構成を組んでいるので、順番に読むほうが本来はわかりやすい。ただしその前提を持ったまま500ページの本を前にすると、読み始めるという行為のコストが跳ね上がります。5分だけ開いてみる、ができなくなる。挫折より前の段階で止まっている人は、たぶんここにいます。

ちなみに筆者は、同じ「投資の名著」枠でずっと薄い『敗者のゲーム』を先に読了しています。中身の難しさ以前に、分量が着手のハードルを決めているという、身も蓋もない話です。

500ページを崩す読む順番|先に読む章と、後回しにしていい章

では、どう組み直すか。読み切った人たちの記録を見ると、共通して出てくる工夫があります。全部を同じ密度で読もうとしないことです。通読の約束を先にほどいてしまえば、開くこと自体は今日でもできます。

扱い対象理由
最初に読む各章の冒頭にある予告部分著者が「この章で何を話すか」を先に書いてくれる。全体地図を先に作れる
次に読む投機の歴史を扱うパート物語として読めるので速度が出る。ここで本への抵抗を落とす
後回しでよい分析手法の検証パート論証が緻密なぶん重い。全体像を掴んでから戻るほうが理解しやすい

要するに、読みやすいところから入って、本に対する心理的な高さを先に下げるという発想です。順番どおりに読むのが正しいという常識を、いったん外す。ここが最大の転換点になります。

もうひとつ、読み切った人が具体的な数字で語っている工夫があります。1日20ページなら約1か月で読み切れる、という計算です。実際に4か月かけて読破したという記録もありました。500ページという総量で考えると絶望的に見えても、1日単位に割ると現実的な数字になる。この視点の切り替えは効きそうです。

電子書籍だからできる崩し方|サンプル・分割読み・読み上げ

紙で持っていると、分厚さが常に視界に入ります。電子書籍にはその圧が無い代わりに、別の使い方ができます。

  • 無料サンプルで翻訳の相性を先に測るまだ買っていないなら、Kindleの無料サンプルで冒頭を読んでみるのが早い。翻訳の文体が合うかどうかは、内容の難易度とは別の問題です。ここで合わないと感じたら、無理に買わない判断もあります。
  • 1日のノルマをページではなく時間で切る電子書籍はページの区切りが曖昧なので、20ページより「15分」のほうが管理しやすい。読書アプリの読了予測時間を目安にする手もあります。
  • 読み上げを併用して往復の時間に当てる目で読むと止まる本でも、耳からなら進むことがあります。歴史パートのような物語性のある箇所は特に相性がよさそうです。
  • ハイライトを「わからなかった場所」に使う普通は響いた箇所に引きますが、詰まった箇所に引いておくと、後で戻る地図になります。

読み上げについては、オーディオブックのサービスごとに収録作品も使い勝手も違います。分厚い本の攻略手段として検討するなら、こちらが参考になります。

関連記事: オーディオブック比較|Audibleとaudiobook.jpの違いと選び方

それでも合わないときは|この本を今読む必要があるかを考える

ここまで読み方の話をしてきましたが、最後に反対のことを書きます。今この本を読まなければならない理由が無いなら、順番を入れ替えてもいいということです。

あるレビューには、初心者なら日本の資産運用の入門書を10冊ほど読んだ後のほうがわかりやすい、という趣旨の指摘がありました。入門書は本書から引用していることも多いので、先にそちらを通ってから戻ると理解が早い、という理屈です。

薄い本を先に片付けて、名著に対する構えを軽くしてから戻る。筆者も『敗者のゲーム』を先に読了しましたが、読み切る体験を先に作るこの順番のほうが、ずっと現実的です。

敗者のゲーム 原著第6版 表紙

敗者のゲーム

チャールズ・エリス/日本経済新聞出版。筆者が所持しているのは原著第6版(現在は第8版が流通)。ランダム・ウォーカーより薄く、筆者も実際に読了できた一冊。

それから、版の問題もあります。筆者が持っているのは第12版で、現在の最新は第13版です。読み始める前に「そもそも古い版のままでいいのか」と気になって手が止まる、という止まり方も実際にあります。この話は分量があるので、別の記事で扱う予定です。

まとめ|読めないのは順番の問題かもしれない

整理します。

  • 止まる原因は本の構造にある500ページ超の分量、翻訳書特有の硬さ、そして主張よりも論証に多くのページが割かれている構成。
  • 難易度は前提知識で割れる「とても読みやすい」という評価も同じくらい存在する。読めないことを能力の問題として片付けなくてよい。
  • 冒頭から順に読む必要はない各章の予告を先に拾い、読み物として面白い歴史パートで速度を出し、検証パートは後に回す。通読を約束しないと決めれば、開くハードルはそこで下がる。
  • 総量ではなく1日単位に割る1日20ページなら約1か月。500という数字のまま眺めていると動けない。

買ったまま開けていない人は、まず「全部読む」という前提を外すところから試してみてください。え?筆者ですか?実はまだ積んでいるので、この設計図をきっかけに、今夜から歴史パートを開きます。

本記事は書籍の紹介であり、投資助言ではありません。特定の投資手法や金融商品を推奨するものではなく、実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。書籍の価格は購入当時のものであり、現在の価格とは異なります。

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