失敗の本質は難しい?挫折せずに読むコツと現代への教訓

失敗の本質は難しい?挫折せずに読むコツと現代への教訓

「1章の途中で力尽きた」。
『失敗の本質』を手に取った人から、よく聞く話です。日本軍の組織的な失敗を分析した名著として評価は揺るがない。それでも、ノモンハン、ミッドウェー、ガダルカナル……と続く作戦分析の細部で足が止まる。作戦名も地名も頭に入らないまま、本を閉じてしまう。

ただ、読み通せない原因は興味の不足ではありません。構成の順番と、読者が知りたいことの順番が逆だからです。この記事では、章の構造から挫折しにくい読み方を提案します。

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失敗の本質 日本軍の組織論的研究 表紙

『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』

戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀・野中郁次郎/中公文庫

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失敗の本質が難しいと言われる3つの理由

失敗の本質』は、防衛大学校の研究者を中心とした共同研究として1984年に世に出た本です。日本軍の敗戦を精神論ではなく組織論で説明した点が画期的で、いまも組織を語る場面で引用され続けています。ただし、読みやすい本かというと話は別。

  • 学術研究がベースで文体が硬い 一般向けに書き下ろされたビジネス書ではなく、共同研究の成果をまとめた本。論文に近い硬さが残っています。
  • 軍事用語と固有名詞が多い 作戦名、部隊名、地名、指揮官名が次々に出てきます。戦史の予備知識がないと、誰が何をした話なのか追うだけで消耗します。
  • いちばん読みたい部分が後ろにある 多くの読者が求めているのは「日本の組織の何が問題なのか」という総括。ところが本書は、6つの作戦分析を積み上げてから総括に入る構成です。

3つ目が特に効いています。筆者がノモンハンで止まったのも、まさにここでした。最初の作戦を読み終えた時点で「この密度があと5つ続くのか」と気づいてしまう。総括にたどり着くまでの距離が見えた瞬間に、心が折れるわけです。裏を返せば、ここを解決すれば読み切れる可能性はぐっと上がります。

結論: 2章から読むと挫折しにくい|章の構造を知る

本書はおおまかに3つのパートで構成されています。

パート 内容 読む順のおすすめ
1章 事例研究 ノモンハンから沖縄まで6つの作戦を個別に分析 3番目(必要な事例だけ)
2章 失敗の本質 6事例を横断し、日本軍組織の特性として総括 1番目
3章 失敗の教訓 現代の組織への示唆・自己革新の条件 2番目

つまり2章→3章→1章。まず総括で「この本が何を言いたいのか」をつかみ、現代への教訓で自分の仕事に接続してから、必要な事例だけ1章に戻る。こう組み替えると、固有名詞の洪水に飲まれる前に本書の骨格が手に入ります。

研究書としての正しい読み方は、もちろん頭から順に読むこと。ただ「積んだまま一生読まない」よりは、順番を崩してでも骨格を持ち帰るほうが得るものは多いはずです。

この本が指摘した日本軍の組織的な弱点

2章から読むと決めたら、そこで何が語られるのかを先に知っておくと迷いません。本書が挙げる日本軍の組織的特性は、たとえばこうしたものです。

  • 戦略目的が曖昧なまま作戦が動く 何を達成すれば勝ちなのかが共有されないまま、個別の戦闘に資源が投じられていく。
  • 過去の成功体験に最適化しすぎる 日露戦争以来の勝ちパターンに組織全体が適応し、環境が変わっても方針を変えられない。
  • 学習と検証の仕組みが弱い 失敗が組織の知識として蓄積されず、同じ誤りが別の戦場で繰り返される。
  • 人間関係と空気が意思決定を左右する データや論理よりも、その場の情緒や上下関係が決定を動かしてしまう。

並べてみると、軍事の話として読む必要がないことが分かります。「過去の成功事例に過度に適応した結果、新しい時代に適応できなかった」という指摘は、そのまま現代の企業の話として読めるものです。

1章の6つの作戦は「事例集」として拾い読みする

では1章は読まなくていいのか。そうではありません。位置づけを変えるだけです。

1章は、通読すべき本文というより参照用の事例集だと考えると扱いやすくなります。2章で「戦略目的の曖昧さ」という指摘に出会ったあと、それが具体的にどう現れたのかを確かめたくなったら、該当する作戦の節に戻る。この往復なら、固有名詞にも意味が宿ります。

筆者のようにノモンハンで止まっている場合も、そこから律儀に次の作戦へ進む必要はありません。いったん2章へ飛び、総括を読んでから振り返れば、すでに読んだノモンハンの記述が「あの指摘の実例だったのか」と像を結びます。止まった地点は無駄になりません。

電子書籍で読んでいる利点が効くのもここ。目次ジャンプで章の間を行き来しやすく、気になった箇所にハイライトを引いておけば、あとから総括と事例を突き合わせるのも簡単です。分厚い本ほど、この機動力が効いてきます。

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40年前の本が現代の組織に刺さり続ける理由

1984年の本が読まれ続けているのは、指摘された病理が消えていないからでしょう。読者の感想でも「1984年に指摘された失敗が、現代日本のあらゆる場所で再現されていると感じる」という声が見られます。

もっとも、当てはめすぎには注意も要ります。うまくいかない組織を見るたびに「失敗の本質だ」と名前を貼るだけなら、本書が批判した「検証のない意思決定」と大差ありません。理論を物差しとして使うなら、自分の組織の何がどう当てはまるのかを、事例と突き合わせて確かめる必要がある。同じことは、他の名著を読むときにも言えます。

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まとめ: 順番を変えれば、読み切れる

『失敗の本質』が難しいのは、内容が高度だからというより、読者が知りたい順番と本の構成がずれているからです。2章の総括から入り、3章で現代への教訓を受け取り、必要になった事例だけ1章に戻る。この順番なら、固有名詞に溺れる前に本書の骨格が手に入ります。

名著を最初のページから律儀に読もうとして挫折する——ドラッカーでも、7つの習慣でも、繰り返されてきたパターンです。本の構造を知り、入口を選び直すこと。それが、積読を減らすいちばん現実的な方法かもしれません。え?筆者ですか?実はノモンハンの章で止まっているので、この記事のとおり2章から読み直します。

本文で紹介した書籍はこちらです。

  • 失敗の本質 日本軍の組織論的研究(戸部良一ほか/中公文庫)失敗の本質 表紙 日本軍の敗戦を組織論から分析した共同研究。2章の総括から読むのがおすすめ。Amazon(Kindle)で見る

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