十角館の殺人から始める新本格入門|館シリーズの読む順番
「『十角館の殺人』が全く楽しめなかった場合、綾辻行人はもういいですか?」
Q&Aサイトに実際にあった質問です。裏を返せば、みんな薄々わかっている。十角館は入口として有名すぎて、「これが合うかどうか」が新本格というジャンル全体との相性判定みたいになっていることに。でも本当は、判定はそんなに単純ではありません。
この記事では、新本格とは何かを1分で押さえたうえで、館シリーズ全9作の読む順番と、十角館が合わなかった場合の「横の入口」まで案内します。仕掛けや犯人に関わる情報は書きません。
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結論: 入口は十角館、シリーズは刊行順
結論は2行で済みます。新本格の入口は『十角館の殺人』。館シリーズを続けるなら刊行順。順番を扱う記事の結論は、この点でほぼ一致しています。各作品は独立して読めるものの、シリーズ全体で積み上がるものがあり、順番どおりに進むほうが後半の作品を深く楽しめるからです。
ただし、この記事はもう一歩先まで面倒を見ます。「十角館が合わなかったら終わり」ではない、という話です。それは後半で。
新本格とは何かを1分で
むずかしい定義は要りません。1987年、綾辻行人のデビュー作『十角館の殺人』から始まった、謎解きの面白さを真ん中に置き直したミステリーの流れ。それが「新本格」と呼ばれるものです。
館・孤島・見取り図・名探偵。古典本格の道具立てを現代の書き手が使い倒す、と言い換えてもいい。だから新本格の入口は理屈抜きに「その起点となった1冊」でいいのです。歴史の順に入ると、いちばん驚ける位置に立てます。
まず十角館1冊で判断していい理由
シリーズ9作を前に「全部読む覚悟がないと始められない」と構える必要はありません。
- 各作品はきちんと完結している刊行順が推奨されるのは「より深く楽しめる」からであって、「読まないと分からない」からではありません。1冊目だけで判断材料は十分揃います。
- 筆者も所持は十角館のみ2022年5月30日に新本格をまとめ買いした際、館シリーズからは十角館だけを選びました。まず起点の1冊で試す。合えば続きへ、という買い方で困っていません。
- 読み進めるときは少しゆっくり「読書慣れてない人はゆっくり理解しながら読んだほうが良い」という読者の声もあります。登場人物が多めなので、序盤の人物紹介だけ丁寧に読むのがコツです。
館シリーズ全9作の読む順番
続ける人のために、刊行順の一覧を置いておきます。
| 順番 | 作品(刊行年) | ひとこと |
|---|---|---|
| 1 | 十角館の殺人(1987) | すべての起点。孤島の十角形の館 |
| 2 | 水車館の殺人(1988) | 水車のある洋館と記憶の謎 |
| 3 | 迷路館の殺人(1988) | 迷路のような館に作家が集う |
| 4 | 人形館の殺人(1989) | ホラー色が強め |
| 5 | 時計館の殺人(1991) | シリーズ屈指の評価 |
| 6 | 黒猫館の殺人(1992) | 「記録」がテーマ |
| 7 | 暗黒館の殺人(2004) | 最長・最重量級 |
| 8 | びっくり館の殺人(2006) | ジュブナイル風の一作 |
| 9 | 奇面館の殺人(2012) | 現時点の最新作 |
刊行順が基本。ただし「1冊だけ味見したい」なら評価の高い時計館を挙げる声もあります。その場合も、時計館の前に十角館だけは挟むのが安全です。シリーズの前提が最初の1冊に詰まっているからです。
十角館が合わなかったときの横の入口
冒頭の質問に戻ります。十角館が楽しめなかったら、綾辻行人は、新本格は、もういいのか。
答えは「館を続ける必要はないが、新本格を閉じるのは早い」です。同じ新本格でも、作風はまるで違います。筆者の蔵書から横の入口を2つ挙げると、昭和初期の奇怪な見立て殺人に挑む占星術殺人事件(島田荘司)と、孤島の研究所を舞台に理系の論理が冴えるすべてがFになる(森博嗣)。巨大な謎に圧倒されたいか、冷たい論理を楽しみたいかで選んでください。
館の雰囲気は好きだが順番がしんどい、という人は海外古典の孤島ものへ戻る手もあります。
関連記事: そして誰もいなくなったと十角館の殺人、どっちを先に読む?
シリーズを一気読みするなら
館シリーズを刊行順に走ると9冊。1冊800円前後の文庫が続くので、一気読み派は読み放題サービスの対象作品を確認してから走り出すのが賢い。対象は時期で入れ替わりますが、月額で読める分だけ先に消化し、対象外だけ買う組み合わせにすると出費がなだらかになります。
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まとめ|起点の1冊から、歴史の順に驚く
- 入口は十角館の殺人新本格の起点。1冊で完結しているので、全9作の覚悟は不要です。
- 続けるなら刊行順シリーズ全体で積み上がるものがあります。味見なら時計館、ただし十角館の後に。
- 合わなくても閉じない占星術殺人事件かすべてがFになるへ。新本格の入口は1つではありません。
ジャンルの相性は、1冊では決まりません。決まるのは、その1冊との相性だけです。
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