施策デザインのための機械学習入門は難しい?前提知識とコード

施策デザインのための機械学習入門は難しい?前提知識とコード

予測モデルの精度は出ているのに、施策の成果につながらない。そこで勧められた本が、数式だらけだったらどうしよう。
『施策デザインのための機械学習入門』は難しいのか。版元が書いた想定読者、目次の章題、サンプルコードの置き場所と執筆時の環境、出典つきの読者の声から、自分の前提知識で読めるかを買う前に判断できるよう整理する。

扱うのは本の位置づけと読み方の地図で、機械学習の手法そのものの解説ではない。当ブログは2021年8月にこの本のKindle版を購入している。

PR:本記事はプロモーションを含みます。

施策デザインのための機械学習入門 表紙

『施策デザインのための機械学習入門 〜データ分析技術のビジネス活用における正しい考え方』

齋藤優太・安井翔太 著/株式会社ホクソエム 監修/技術評論社(2021年8月)/A5・336ページ

Amazonで見る(Kindle版) 楽天Koboで見る

施策デザインのための機械学習入門は難しい?

版元が想定しているのは、機械学習を仕事で扱う人とその志望者だ。技術評論社の書籍ページの「こんな方にオススメ」には、機械学習エンジニア、データサイエンティスト、「機械学習エンジニア、データサイエンティスト職を志望する学生」の3つが並ぶ。

読者の声は二つに割れている。「実務経験者向け」「数式が多い」という声がある一方、考え方の本としては平易で読み通せた、という声もある。割れ方は、コードを書いて実装する立場か、施策を議論する立場かにおおむね対応している。

つまり、統計や機械学習の基礎がまったくない状態で最初の1冊にするには重い。基礎を一通り学んだ実務者にとっては、版元の狙いどおりの本、というのが出典から読み取れる位置づけになる。以下、その根拠を章題とコードの所在から順に見ていく。

書誌と、どんな問題意識の本か

項目内容(版元表記)
書名施策デザインのための機械学習入門 〜データ分析技術のビジネス活用における正しい考え方
著者・監修齋藤優太・安井翔太 著/株式会社ホクソエム 監修
版元・発売日技術評論社・紙2021年8月4日(電子2021年7月30日)
判型・頁数A5・336ページ
ISBN紙 978-4-297-12224-9/電子 978-4-297-12225-6
構成はじめに+全5章+付録A(演習問題)

出発点の問題設定は、版元の概要にはっきり書かれている。概要が挙げるのは、「手元のデータに対して良い精度を発揮する予測モデルを得たにもかかわらず、実際のビジネス現場では望ましい結果を得られないという厄介で不可解な現象に直面しています。」という状況だ。そのうえで本書の目標を「本書では、ビジネス施策を自らの手で導くために必要な汎用的な考え方を身につけることを目指します。」と置いている。

手法のカタログというより、考え方の型を示す本。ここが、要約だけ読んで済ませにくい理由でもある。

著者のうち齋藤優太氏は、刊行時の版元プロフィールでは反実仮想機械学習や推薦・ランキング学習の研究者。安井翔太氏は同じ技術評論社から『効果検証入門』(2020年)を出している。

前提知識はどこまで要る?章ごとの重さの地図

「はじめに」には「想定読者と読者に望む姿勢」という節がある(版元目次)。この節の本文は版元サイトでは公開されていない。書評ブログ(fullflu氏ほか)が引用している範囲では、想定読者は「機械学習を活用したビジネス施策の実践に取り組んでいるすべての機械学習エンジニアやデータサイエンティスト」とされている。

では、どの章が重いのか。中身の手法には立ち入らず、版元の目次にある章題と節題だけで地図を作ると次のようになる。

章章題(版元目次)目次から分かること
1章機械学習実践のためのフレームワーク1.2の6項は「KPIを設定する」から「施策を導入する」までの日本語の手順名。コードの対象外
2章機械学習実践のための基礎技術2.3が「Open Bandit Pipelineを用いた実装」
3章Explicit Feedbackを用いた推薦システム構築の実践3.5が「Pythonによる実装とYahoo! R3データを用いた性能検証」
4章Implicit Feedbackを用いた推薦システムの構築4.3がPyTorchでの実装。4.6に「省略した計算過程」の節
5章因果効果を考慮したランキングシステムの構築5.1が「本章で扱う発展的な話題」。5.4がPyTorchでの実装
付録A演習問題2〜5章それぞれに対応

2〜5章にはすべて実装の節があり、使う道具が節題に書かれている。5章は版元の目次自体が「発展的な話題」と呼び、4章には計算過程を補う節がある。後ろの章ほど、Pythonと数式の両方に慣れていることが求められる構成と読める。

読者の声を立場別に並べると、次のとおり。

  • 実務経験者向けという声gepulog(2021年8月)は「機械学習を既に実務で何度も投入した経験がある人向けの本です。」と書き、これから学ぶ人は本書で紹介されている本を先に、という趣旨を添えている。
  • 基礎が先に要るという声noteのくらげ氏(2022年11月)は、確率・統計・機械学習の基礎知識がある程度ないと理解しにくいので先にそちらを、という趣旨。
  • 数式が多いという声noteのEi-chan氏(2026年1月)は「書かれている内容は難しく、数式もたくさん出てくる」。くろたんく雑記帳(2021年8月)も数学的な議論が多いとしつつ、数式は省略せず説明されている、と書いている。
  • 読み通せたという声Sansan Builders Box(2021年8月)は直感的・平易に書かれていて「読み通すことができました」とする一方、具体的な分析手法は別に学ぶ必要がある、という趣旨。
  • 読み方の声fullflu氏(2021年8月)は1章・2章が根幹で、1章から順に読むことを勧める趣旨。企画職が概要だけ理解したい場合に向くかは判断が難しい、とも書いている。

整理すると、「難しい」と言われる理由は数式の量と前提知識の2つに集まっている。実装しない立場なら、fullflu氏が根幹と書いた1章・2章から読み始めるのが一つの目安になる。

サンプルコードはどこにある?GitHubの中身と注意点

「施策デザインのための機械学習入門 github」と検索する人が探しているのは、このコードの置き場所だろう。コードは著者個人のアカウントではなく、技術評論社のGitHub(ghmagazine)にある。

サンプルコード: ghmagazine/ml_design_book(GitHub)

READMEの冒頭は「技術評論社発行の書籍『施策デザインのための機械学習入門』」のサンプルコードである、という書き出し。中身は次のとおり。

フォルダ対応する節(README)
ch022.3節 Open Bandit Pipelineを用いた実装
ch033.5節 Pythonによる実装とYahoo! R3データを用いた性能検証
ch044.3節 PyTorchを用いた実装と簡易実験
ch055.4節 PyTorchを用いた実装と簡易実験
  • 1章のコードはないフォルダはch02〜ch05の4つ。1章は枠組みの章なので対象外。
  • 形式と環境構築Jupyter Notebookが中心。環境はpoetryで作る方式で、READMEには「フォルダ直下で`poetry install`を実行すると、本書と同じ環境を構築できます。」とある。
  • 2021年当時のバージョンで固定READMEには書籍執筆時のバージョン(python ^3.9、torch ^1.9.0、scikit-learn ^0.24.2、obp ^0.4.1など)が並び、「これらのパッケージのバージョンが異なると、使用方法や挙動が本書執筆時点と異なる場合があるので、注意してください。」と注意書きがある。
  • 最終更新は2021年9月リポジトリへの更新はそこで止まっている(2026年10月確認)。ライセンスはBSD-3-Clause。

当ブログは手元でコードを実行していないので、現在の環境でそのまま動くかは分からない。最新のライブラリで試す前に、まずREADMEのバージョン表を確かめておきたい。

なお、技術評論社の書籍サポートページにあるのはダウンロードではなく正誤表(第1〜3刷向け)だ。コードを探してサポートページを開いた人は、GitHubのほうを見るとよい。

電子版で読むなら

Kindle版はリフロー型で、文字の大きさを端末に合わせて変えられる。ファイルサイズは26.3MBで、商品ページにはファイルサイズが大きいためWi-Fi環境でのダウンロードを勧める注記がある。版元の直販(Gihyo Digital Publishing)ではPDFとEPUB(リフロー)のセット、楽天Koboにも電子書籍版がある。

数式と図の多い技術書は、端末やアプリによって読みやすさが大きく変わる。どのアプリで読むかは別記事で比べた。

関連記事: ビジネス書を読むならどの電子書籍アプリ?目的別に徹底比較

読む前後に合わせたい本

施策デザインのための機械学習入門 表紙

本書の問題意識は、施策の成果をどう確かめるかという問いと地続きだ。オンラインの実験の設計と運用を扱う定番書の構成は、同じシリーズの記事で整理している。

関連記事: A/Bテスト実践ガイドは難しい?23章の構成と立場別の読み始め

「基礎が先に要る」という声に従うなら、数式を使わずに因果推論の考え方へ入る新書や、数理モデルの入門書が手前の1冊になる。

関連記事: データ分析の力は難しい?数式なし新書の限界と第8章から進む先

関連記事: 数理モデル入門は難しい?前提知識と分析モデル入門との違い

ちなみに当ブログがKindle版を購入したのは2021年8月31日で、購入当時2,980円だった。価格は時期により変わる。

まとめ|立場で変わる「難しさ」

  • 版元の想定は実務者と志望学生「こんな方にオススメ」は機械学習エンジニア、データサイエンティスト、その職を志望する学生の3つ。
  • 難しさは後ろの章ほど増す構成1章は日本語の手順名でできた枠組み。2〜5章は各章に実装節があり、5章は版元が「発展的な話題」と呼ぶ。
  • コードは技術評論社のGitHubghmagazine/ml_design_book。ch02〜ch05、2021年当時のバージョン固定、最終更新2021年9月。
  • 基礎がなければ手前の1冊から統計・機械学習の基礎を前提とする声が複数ある。

実装まで追うなら基礎を固めてから、施策を議論する立場なら1章・2章から。自分がどちらの立場で読むかを決めてから開くと、この本の重さはずいぶん変わるはずだ。

施策デザインのための機械学習入門 表紙

『施策デザインのための機械学習入門』(技術評論社)

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