機械学習とディープラーニングの数学のきほん、続刊から読んでいい?

ディープラーニングの数式だけ知りたいのに、前作から買わないとだめなのか。
立石賢吾『やさしく学ぶ 機械学習を理解するための数学のきほん』と『やさしく学ぶ ディープラーニングがわかる数学のきほん』は、続刊から読んでも問題ないと版元が明記している。決め手は順番より目的で、その判断材料を想定読者・目次の範囲・電子版の形式から整理する。
扱うのは数学や機械学習の中身の解説ではなく、2冊の位置づけと選び方。当ブログは2021年5月15日に、この2冊を同じ日にKindle版で購入している。
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数学のきほん2冊はどっちから読む?
続刊のディープラーニング版から読んでも問題ない、と版元自身が書いている。マイナビ出版の内容紹介には「本書は『やさしく学ぶ 機械学習を理解するための数学のきほん』の続刊となりますが、前作を読んでいない人でも問題なく読むことができます。」とある。
つまり、刊行順に読む必要はない。決め手になるのは順番ではなく、知りたいのが機械学習全般の数式か、ディープラーニングの数式か、という目的のほうだ。以下では、2冊の書誌、版元の想定読者、目次の範囲、電子版の形式の順に、その判断材料を並べていく。
2冊の書誌と、同じ著者の2年違いの本
著者はどちらも立石賢吾。所属表記だけが違うので、別人と取り違えないよう注意したい。
| 項目 | 前作(機械学習) | 続刊(ディープラーニング) |
|---|---|---|
| 書名 | やさしく学ぶ 機械学習を理解するための数学のきほん | やさしく学ぶ ディープラーニングがわかる数学のきほん |
| 副題(版元表記) | アヤノ&ミオと一緒に少しずつ学ぶ 機械学習の理論と数学、実装まで | アヤノ&ミオと学ぶ ディープラーニングの理論と数学、実装 |
| 著者(刊行時の所属) | 立石賢吾(LINE Fukuoka) | 立石賢吾(スマートニュース) |
| 版元・発売日 | マイナビ出版・2017年9月20日 | マイナビ出版・2019年7月31日 |
| 判型・頁数(版元表記) | A5・256ページ | A5・352ページ |
| 版元の備考欄 | 入門 | 初級 |
| 形式 | プログラマのアヤノと友達のミオの会話形式 | 同じく会話形式 |
刊行の間隔は約1年10か月。続刊は前作より96ページ厚い。副題は、Amazon(Kindle)や楽天Koboの表記では前作の「少しずつ」が抜けるなど揺れがあるので、検索するときは書名の本体部分で探すと見つけやすい。版元の備考欄が前作「入門」、続刊「初級」と分かれている点も、選ぶ際の手がかりになる。
版元が書いた想定読者で分ける
2冊の違いがいちばんはっきり出るのは、版元が書いた想定読者の文だ。原文を並べてみる。
- 前作(機械学習)「機械学習の数式に対するモヤモヤを、一掃したいエンジニアの方に最適な1冊です。」「高校で習った数学を忘れている方でも分かるように」
- 続刊(ディープラーニング)「ディープラーニングをライブラリで実装できるけれど、よく意味が分かっていない」人に向けた本として紹介されている。
この想定読者文と備考欄のラベルから、目的別に振り分けると次のようになる。これは版元の説明をもとにした当ブログの推論で、本書が推奨する読む順番ではない。
| いまの状況・目的 | 向く1冊 |
|---|---|
| 機械学習の本を開くと数式でつまずく。高校数学も忘れ気味 | 前作(備考欄「入門」) |
| ディープラーニングをライブラリで動かせるが、中で何が起きているか分からない | 続刊(備考欄「初級」) |
| 機械学習全般とディープラーニングの両方を押さえたい | 2冊。版元注記により、刊行順でも続刊からでも可 |
| ディープラーニングにしか関心がない | 続刊1冊から始められる |
注意したいのは、書名の「やさしく学ぶ」の受け止めが、読む人の前提知識で割れていること。ブックライブのレビューには前作について「やさしくとは言っているが、それは理系の人にとってという意味なのは注意」という声があり、書評ブログ「LWのサイゼリヤ」(2020年10月)も「別に言うほど優しくはない気はする」と書いている。一方で、会話形式が読みやすいという感想は複数のブログに見られた。続刊についても、技術系メディアの@ITは「ある程度の数学知識がある人向け」と評している。
数学に強い苦手意識があるなら、版元のサンプルや目次で数式の量を確かめてから選ぶのが無難だろう。
目次で比べる範囲の違い
2冊とも全5章とAppendixの構成。章題を並べると、扱う題材が重ならないことが分かる。中身の手法には立ち入らず、版元の目次にある章題だけを比べる。
| 章 | 前作(機械学習) | 続刊(ディープラーニング) |
|---|---|---|
| Chapter1 | ふたりの旅の始まり | ニューラルネットワークを始めよう |
| Chapter2 | 回帰について学ぼう | 順伝播を学ぼう |
| Chapter3 | 分類について学ぼう | 逆伝播を学ぼう |
| Chapter4 | 評価してみよう | 畳み込みニューラルネットワークを学ぼう |
| Chapter5 | 実装してみよう(Pythonでプログラミング) | ニューラルネットワークを実装しよう |
| 章末など | 5-4 後日談 | 各章末にColumn、最後にColumn 後日談 |
| Appendix | 10節(総積の記号・幾何ベクトルを含む) | 9節 |
Appendixの並びはよく似ている。総和の記号、微分、偏微分、合成関数、ベクトルと行列、指数・対数、Python環境構築、Pythonの基本、NumPyの基本。数学の補習とPythonの基本を巻末に持つ作りは共通で、前作にはそこへ総積の記号と幾何ベクトルが加わる。
実装の章について、続刊の版元紹介には「ライブラリとしてはNumPyだけを使用し」とある。前作もPython 3での実装と版元が注記している。
サンプルコードはどこにある? 両書とも、マイナビ出版のサポートサイトでChapter5のソースコードがzipで配布されている(前作のサポートページ/続刊のサポートページ)。前作のサポートページには訂正情報も載っているので、買う前後に一度見ておくとよい。
電子版で読むなら知っておくこと
2冊とも、Kindle版・楽天Kobo版は固定レイアウト型。ストアの商品説明には「固定レイアウト型の電子書籍です。」「タブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています」とあり、文字列のハイライトや検索、辞書の参照が使えないとも書かれている。数式と図の多い紙面をそのまま画像で表示する形式なので、スマホの小さな画面では読みにくい場面がありそうだ。
- 前作Kindle・楽天Koboとも固定レイアウト。色数の注記はストアの説明文に見当たらない。
- 続刊固定レイアウトに加え、Kindleの商品説明に「※本書内容はカラー(2色)で制作されているため、カラー表示可能な端末での閲覧を推奨いたします。」との注記がある。
- 版元PDFマイナビ出版の自社ショップでは、両書ともPDF版も扱っている。
数式や図の多い技術書をどのアプリ・端末で読むかは、電子書籍ストア選びにも直結する。
関連記事: ビジネス書を読むならどの電子書籍アプリ?目的別に徹底比較
2冊まとめてそろえるつもりなら、ストアごとのセールやクーポンの違いも先に見ておきたい。
関連記事: 電子書籍のセール・クーポンが多いアプリ徹底比較|お得に買う3選
前後に合わせたい本
2冊の前に、プログラマ向けの数学の土台を固めたい人もいるだろう。ロングセラーの入門書の版の違いは別記事で整理した。
関連記事: プログラマの数学 第2版は古い?2005年の初版と加筆された付録
機械学習の数式の先には、確率・統計と、ベクトル・行列・最適化の2方向がある。どちらもプログラマ向けの教科書があり、数学のきほん2冊と組み合わせやすい。
関連記事: プログラミングのための確率統計は難しい?中盤で要る数学と姉妹書
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読者の声では、前作の次に赤石雅典『最短コースでわかる ディープラーニングの数学』へ進むという読み順も見られた。当ブログはこの本の所持を確認できていないため、名前の紹介にとどめる。
ちなみに当ブログが2021年5月にKindle版で購入したときは、購入当時2,451円(前作)と2,412円(続刊)だった。価格は時期により変わる。
まとめ|順番より目的で選ぶ
- 続刊から読んでいい版元が、前作を読んでいない人でも問題なく読めると明記している。
- 題材は重ならない前作は回帰・分類・評価、続刊はニューラルネットワーク・順伝播・逆伝播・畳み込み。Appendixの補習は共通の並び。
- 目的で1冊を選ぶ機械学習全般の数式なら前作(入門)、ディープラーニングの中身なら続刊(初級)。両方なら順番は自由。
- 電子版は大きい画面で2冊とも固定レイアウト。続刊は2色カラーでカラー端末推奨。
同じ著者・同じシリーズ名でも、2冊は前編・後編というより、扱う領域の違う2冊と見たほうが選びやすい。自分の目的に近いほうの目次から確かめてみてほしい。

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