コトラーのマーケティング4.0は古い?6.0との時差と読む順

「コトラーのマーケティング4.0、読んでおいて」と渡されたのに、隣には5.0と、2026年7月に出た6.0まで並んでいる。
『コトラーのマーケティング4.0』は古いのか、最新の6.0から読むべきか。邦訳は2017年8月、原書は2016年の本だ。レビューには「2023年に読むと少し当たり前に感じてしまう」という声がある一方で、同じ1文の中に「ここから参考にしたものも多かった」とも書かれている。古さの判定は、何を確かめたくてこの本を開くかで変わってくる。
この記事は要約ではなく、シリーズ4冊(3.0・4.0・5.0・6.0)を前にした人のための判断材料をまとめたもの。4冊の刊行年・頁数・章構成・版元による呼び分けを1表に並べ、原書から邦訳までの時差(6.0はシリーズで最も長い)、Amazonの商品ページで「新版」として表示されるのがどの巻か、読む順について版元と読者が何と言っているか、Kindle版の仕様差を、版元の書誌と読者の声で整理する。当ブログは4.0のKindle版を2020年10月に購入している(購入当時1,710円)。5Aなど各巻の手法の中身は扱わない。
PR:本記事はプロモーションを含みます。
『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則』
フィリップ・コトラー、ヘルマワン・カルタジャヤ、イワン・セティアワン 著/恩藏直人 監訳/藤井清美 訳/朝日新聞出版(2017年8月21日)/四六判272ページ(Amazon紙版表記)/Kindle版は241ページ表記・X-Ray有効
目次
コトラーのマーケティング4.0は古いのか|2016年の原書と、評価が同居するレビュー
刊行年だけで言えば、4.0はシリーズの中で新しい本ではない。原書は2016年、邦訳は2017年8月で、その後に5.0(邦訳2022年4月)と6.0(同2026年7月)が出ている。ただ、読者の評価は「古い」の一言にまとまっていない。同じ本に「当たり前」と「教科書」の両方の言葉が付いていて、どちらに寄るかは読む目的で変わる。先に結論の形で言えば、刊行年では古い側だが、版元は5.0刊行時にも4.0を「応用の書」としてシリーズの中に位置づけており、4.0を渡されたならそこから読み始めて困る材料は見当たらない。新しい巻との差は、以下の書誌と章題で確かめられる。
- 「当たり前」と「参照元」が1文の中にあるBookLiveに転載されたブクログの感想は「2017年の時代に書かれたコトラー先生のマーケティングは2023年に読むと少し当たり前に感じてしまう内容でしたが、他で読んだマーケティング書籍はここから参考にしたものも多かったはずですね。」と書く。古く感じる理由が、後続の本に取り込まれて広まったことの裏返しになっている。
- 「教科書」として読む声BookLive掲載のブクログ感想(2025年11月)には「現代におけるマーケティングの教科書。」とあり、続けて「知らないことは少なかった」とも書かれている。知っている内容が多いことを、基準書であることの証拠として受け取る読み方だ。
- 一つ前の3.0を飛ばす判断ブクログ(2022年8月)には「マーケティング3.0も読むべきかと悩んだが」と書いたうえで、コトラーなら「いつの本だと思ってる?時代遅れだ」と言うだろうから読まない、と判断した感想がある。4.0を古いと見るか、3.0を古いと見るか。基準は読む人の側にある。
版元の位置づけも見ておきたい。4.0の版元紹介は、3.0で考察された次世代マーケティングを発展させ、自社の商品やブランド戦略に取り入れる方法論も解説する本だと説明し、「神様コトラーの最終講義!」と結んでいる。その後に5.0と6.0が続いたので、4.0は結果的にシリーズの2冊目になった。5.0刊行時の版元紹介では、4.0は「応用の書」と呼ばれている。
「古い?」と検索される定番書は、当ブログでもいくつか扱ってきた。刊行年と、いま読む価値を切り分けて考えるなら次の記事も近い。
関連記事: リーン・スタートアップは古い?2026年に読む価値と限界
3.0・4.0・5.0・6.0を1表で比べる|刊行・頁数・章構成・版元の呼び方
4冊はいずれも、フィリップ・コトラー、ヘルマワン・カルタジャヤ、イワン・セティアワンの3人による共著。日本語版はすべて朝日新聞出版から出ていて、監訳は恩藏直人氏、訳は藤井清美氏で4冊とも同じ顔ぶれだ。シリーズを通して読むときに、訳者が途中で変わらないという点は押さえておいてよい。
| 項目 | 3.0 | 4.0 | 5.0 | 6.0 |
|---|---|---|---|---|
| 副題 | ソーシャル・メディア時代の新法則 | スマートフォン時代の究極法則 | デジタル・テクノロジー時代の革新戦略 | フィジタル時代の新原則 |
| 邦訳の発売 | 2010年9月 | 2017年8月21日 | 2022年4月20日 | 2026年7月7日 |
| 原書(Wiley) | 2010年 | 2016年 | 2021年 | 2023年 |
| 頁数(紙) | 286ページ | 272ページ(Amazon紙版表記) | 344ページ | 296ページ |
| Kindle「本の長さ」 | Kindle版あり | 241ページ | 332ページ | 254ページ |
| 構成 | 3部(トレンド/戦略/応用) | 3部11章 | 4部12章 | 3部10章 |
| 版元の呼び方 | 入門の書(5.0刊行時) | 応用の書(5.0刊行時) | 戦略の書・シリーズ第三弾 | 名シリーズの待望の最新作 |
| 当ブログの所持 | なし | Kindle版(2020年10月購入) | なし | なし |
頁数は版元の登録データ(版元ドットコム)を優先。4.0は同データに頁数の登録がないためAmazonの紙版表記で、大学図書館の書誌(CiNii)は269pと記録している。Kindleの「本の長さ」はAmazon商品ページの表示(2026年10月2日時点)。紙とKindleで数字が違う理由はここでは推測しない。Amazonの紙版表記で揃えても3.0は288ページ、5.0は344ページ、6.0は296ページで、4.0の272ページが最も少ない。
紙の頁数で見ると、4.0はシリーズで最も少ない。344ページの5.0と比べると、紙で72ページ少ない。3.0から4.0までは7年空いたが、4.0から5.0は約5年、5.0から6.0は約4年で邦訳が出ている。「4.0が出たと思ったら、また5.0がすぐ出てるので時代についていくのが大変そうという印象も持ちました。」(ブクログ・2023年3月)という感想は、この刊行ペースへの反応だ。
章題で見る4冊の違い|スマートフォンから世代とテクノロジー、メタバースへ
各巻が何の時代を扱っているかは、中身の解説に踏み込まなくても、版元の書誌データや図書館の書誌(CiNii、4.0はこちらに掲載)に載っている目次の章題で見分けられる。
| 巻 | 部の名前(目次) | 章題に出てくる主な語 |
|---|---|---|
| 3.0 | トレンド/戦略/応用 | 消費者・社員・チャネル・パートナー・株主、新興市場、環境の持続可能性 |
| 4.0 | マーケティングを形づくる基本的なトレンド/デジタル経済におけるマーケティングの新しいフレームワーク/デジタル経済におけるマーケティングの戦術的応用 | つながっている顧客、デジタル・サブカルチャー、カスタマー・ジャーニー、コンテンツ、オムニチャネル、エンゲージメント |
| 5.0 | 序論/デジタル世界でマーケターが直面する課題/テクノロジー支援マーケティングのための新戦略/マーケティング・テクノロジー活用の新戦術 | 世代間ギャップ、富の二極化、デジタル・ディバイド、データドリブン、予測、アジャイル |
| 6.0 | マーケティング6.0の概要/イネーブラーと環境/マーケティング6.0の体験 | フィジタル・ネイティブ、エクステンデッド・リアリティ、メタバース、多感覚、空間 |
4.0の章題に並ぶのは、副題のとおりスマートフォンで顧客がつながった後の時代の語。5.0はテクノロジーやデータを使う側の組織と、世代・格差という社会側の課題を章題に掲げ、6.0は現実とデジタルを融合させた体験の話に移っている。4.0の版元紹介が3.0の発展と書き、5.0の版元紹介が3.0と4.0を順に挙げてから自らを紹介しているように、各巻は前の巻を受ける形で出されてきた。
4.0の構成でもうひとつ挙げておきたいのは、各章の終わりに短いまとめが置かれていること。原書の目次では全11章に「Summary」の節があり、日本語版の読者も「章ごとに、最後にまとめ・考えるべき問いを記載してくれているのが、とても親切に感じた。」(BookLive掲載のブクログ感想)と書いている。必要な章だけ拾い読みするときの手がかりになる。
章題を見て、自分の仕事で必要な時代が「スマートフォンで顧客がつながった後」の購買行動なら、4.0の章題が重なる。データや予測の話が必要なら5.0、XRやメタバースが仕事に入ってくるなら6.0の章題が近い。4冊の目次は、版元の書誌データや図書館の書誌で誰でも確認できる。
6.0との時差と、Amazonの「新版」表示|原書から邦訳まで2年以上
「最新の邦訳=最新の内容」とは限らない。各巻の原書と邦訳の刊行年を並べると、6.0だけ間隔が長いことがわかる。
| 巻 | 原書(Wiley) | 邦訳 | 邦訳までの目安 |
|---|---|---|---|
| 4.0 | 2016年 | 2017年8月 | 翌年 |
| 5.0 | 2021年 | 2022年4月 | 翌年 |
| 6.0 | 2023年(Wiley表記。2024年とする紹介もある) | 2026年7月 | 2年以上 |
6.0の日本語版は2026年7月の新刊だが、原書はWileyの表記で2023年刊(2024年とする紹介もある)。Wileyの表記に従えば、邦訳の新しさと論じられている時代の新しさには2年以上の差がある。6.0を「2026年の本」として読むか「2023年の本の翻訳」として読むかで、受け取り方は変わってくるはずだ。
もうひとつ、ストアの表示にも注意したい。2026年10月2日時点で、Amazonの紙版の3.0と4.0の商品ページには「この商品には新版があります」として5.0が表示される。6.0ではない。これはAmazonのカタログ上の紐づけで、版元が「5.0が4.0の新版」と言っているわけではない。ストアの表示だけで順番を決めると、6.0の存在を見落としやすい。
6.0は評価の固まり方にも差がある。Amazonの評価件数は4.0が417件・5.0が224件に対して、6.0は10件(いずれも2026年10月2日時点)。Kindle版のX-Rayも4.0・5.0は有効、6.0は無効と表示されている。読者の評価で選びたい人にとっては、6.0はまだ材料が少ない段階にある。
版や改訂の新旧をどう読むかは、改訂版と旧版が併存する本でも同じ問題になる。
関連記事: キャズムはVer.2でいい?旧版との違いと事例の古さの補い方
読む順はどう語られているか|入門・応用・戦略の書と、5.0から入った読者
当ブログが確認した版元紹介と書誌の範囲では、著者や版元が「この順で読むこと」と指定している記述は見当たらない。手がかりは、5.0刊行時の版元紹介にある呼び分けと、読者がどこから入ったかの声の2つだ。
- 版元の呼び分け(5.0刊行時)3.0を「入門の書」、4.0を「応用の書」、5.0を「戦略の書」と紹介し、5.0を「シリーズ第三弾」と位置づけている。この呼び方を読む順の手がかりにするなら、刊行順になる。一方で6.0の版元紹介は「20か国以上で翻訳された名シリーズ『コトラーのマーケティング』、待望の最新作!」で、入門・応用のような呼び分けはない。
- 5.0から入った読者は「読みやすい」ブクログ(2025年6月)には「5.0で初めて読みました。思っていた以上に読みやすいものでした。」とあり、続けて専門書というより大衆化された本のように感じた、とも書かれている。
- 同じ5.0を「初心者には難しい」とする読者も同じくブクログ(2024年4月)には「マーケ初心者には難しいし、文章が読みづらい。」という短い感想がある。読みやすさの評価は読者によって割れている。
- 訳文の方針は監訳者解説に5.0の監訳者解説には「翻訳書として原文に忠実であろうとすると、どうしても読みにくさが残ってしまうが、そうした違和感をできるかぎり取り除くことを心掛けた。」とある(noteの読書記録(2025年1月)による引用。当ブログは5.0を所持しておらず、原文とは照合していない)。
材料を整理すると、入口は3つに分けられる。
| 確かめたいこと | 入口の候補 | 根拠になる材料 |
|---|---|---|
| シリーズの考え方を順に追いたい | 刊行順(3.0から) | 版元の「入門の書/応用の書/戦略の書」の呼び分け |
| 他のマーケティング本が前提にしている枠組みを押さえたい | 4.0から | 「ここから参考にしたものも多かった」という感想、章末のまとめ、シリーズ最薄の272ページ |
| いまの仕事の課題(データ・予測、XR・メタバース)に近い巻だけ読みたい | 5.0または6.0から | 5.0から入って読みやすかったという声、6.0の章題。ただし6.0は原書がWiley表記で2023年・評価件数10件 |
どの入口が正しいという話ではない。3.0を飛ばして4.0から入った読者もいれば、5.0から入った読者もいる。課題図書として4.0を渡されたなら、まず渡された1冊を読み、気になる時代の論点があれば後の巻に進む、という順番も、ここに挙げた材料と矛盾しない。これは当ブログの整理で、版元が示した順番ではない。
Kindleで揃えるなら|頁数・X-Ray・音声版と、次に読む本
電子版で読む場合の仕様は、Amazonの商品ページの表示で比べられる(2026年10月2日時点)。
- 4.0(Kindle版)本の長さ241ページ・11.4MB・X-Ray有効。評価4.2(417件)。
- 5.0(Kindle版)本の長さ332ページ・16.9MB・X-Ray有効。評価4.2(224件)。
- 6.0(Kindle版)本の長さ254ページ・14.6MB・X-Rayは無効の表示。評価4.1(10件)。
- 音声版2026年10月時点で、Audibleとaudiobook.jpを検索した範囲では、3.0〜6.0の日本語の音声版は見当たらない(Audibleには英語原書の5.0がある)。
当ブログが4.0のKindle版を購入したのは2020年10月で、5.0の邦訳が出る1年半前にあたる。シリーズを電子版で何冊か揃えるなら、まとめ買いの時期をセールやクーポンに合わせる手もある。ストアごとのセール・クーポンの傾向は次の記事で比べている。
関連記事: 電子書籍のセール・クーポンが多いアプリ徹底比較|お得に買う3選
次に読む本の候補として、当ブログが2021年8月に購入した『コトラーのリテール4.0』(朝日新聞出版・2020年4月20日)を挙げておく。こちらはジュゼッペ・スティリアーノとの共著で、監修は恩藏直人氏、訳は高沢亜砂代氏。x.0シリーズとは共著者も訳者も違う関連書だ。5.0のKindle版の紹介文は、この本を「前作『リテール4.0』」と呼び、その「法則と実践をマーケティング全般にまで広げアップデートさせた最新刊」と5.0を説明している。紙の版元紹介は5.0を「シリーズ第三弾」と呼んでいるので、リテール4.0をどこに置くかは紹介文によって書き方が違う。5.0の電子版の紹介文が「リテール業界を中心に説いた」と書く本で、Kindle版は308ページ表記(X-Ray無効)。
マーケティング以外の経営書も含めて、原理から実務へどう読み進めるかは、経営戦略の名著をまとめた記事で整理している。シリーズものの「どれから読むか」を書誌で決める考え方は、同じマーケティング定番書の『確率思考の戦略論』の記事とも共通する。
関連記事: 経営戦略の名著おすすめ|原理から実務までの読む順番
関連記事: 確率思考の戦略論は赤と青どっち?巻末解説の数式と2025年版の差
4.0を開く前に確かめる3点
- 古さは刊行年と評価で分けて見る原書2016年・邦訳2017年の本で、後に5.0と6.0が出ている。レビューには「少し当たり前」と「ここから参考にしたものも多かった」が同居し、2025年にも「教科書」と呼ぶ声がある。
- 6.0の新しさには時差がある6.0は原書(Wiley表記で2023年)から邦訳2026年まで2年以上。Amazonの紙版3.0・4.0のページで「新版」と表示されるのは5.0なので、ストア表示だけで順番を決めない。
- 読む順は目的で変わる版元の呼び分けに沿えば刊行順、他の本の前提を押さえるなら4.0、いまの課題に近い巻からなら5.0か6.0。4冊とも監訳者・訳者は同じ顔ぶれだ。
「読んでおいて」と4.0を渡されて、5.0と6.0の存在に迷っている人へ。4.0はシリーズで最も薄く、各章の終わりにまとめがある。渡された1冊から始め、仕事で必要な時代の論点に応じて次の巻を選ぶ、という順番がここまでの材料から見えてくる(当ブログの整理)。
書籍の価格は購入当時のものであり、現在の価格とは異なります。評価件数・Kindleの仕様は2026年10月2日時点の表示です。
コメント
コメントを投稿