HIGH OUTPUT MANAGEMENTは古い?1983年の本を今読む理由

HIGH OUTPUT MANAGEMENTは古い?1983年の本を今読む理由

「1983年の製造業の本が、今の自分の仕事に効くのか」。
HIGH OUTPUT MANAGEMENTを勧められて、まずそこが引っかかった人は多いはずです。はじめて部下を持ち、1on1のやり方を調べると必ず名前が出てくる本。でも原著は40年以上前、著者は半導体メーカーの経営者。レビューには「翻訳が下手なのか頭にスッと入らない」という声すらあります。買う前に、古さの正体を確かめたくなるのは当然です。

この記事では、本書の中身を「今も現役の部分」と「時代を感じる部分」に監査したうえで、翻訳の硬さで挫折しないための章の入り方まで整理します。先に結論を言えば、骨格は現役です。1on1もOKRも、源流をたどるとこの本に行き着きます。

PR:本記事はプロモーションを含みます。

HIGH OUTPUT MANAGEMENT 表紙

『HIGH OUTPUT MANAGEMENT 人を育て、成果を最大にするマネジメント』

アンドリュー・S・グローブ/日経BP

Amazonで見る(Kindle版)

HIGH OUTPUT MANAGEMENTはどんな本か

HIGH OUTPUT MANAGEMENT 表紙

HIGH OUTPUT MANAGEMENT』は、インテルの伝説的経営者アンディ・グローブが1983年に著したマネジメント書です。日本語の現行版は2017年に日経BPから刊行されました。本書を貫くのは、たった一つの定義です。マネジャーの仕事は、自分が管理する組織と、自分が影響を及ぼせる隣接組織のアウトプットを最大化すること。

マネジャー自身がどれだけ働いたかではなく、組織から何が出てきたかで測る。この定義から、テコ作用(レバレッジ)という考え方が導かれます。1時間の使い方の中で、部下や組織のアウトプットを最も増やす活動はどれか。1on1も会議設計も人事評価も、本書ではすべてこのテコの大きさで説明されます。マネジメントを精神論ではなく生産の科学として扱う。それがこの本の背骨です。

「古くない」部分|1on1・会議の2分類・OKRの源流

「1983年なのに色褪せていない」というレビューの声には、具体的な裏付けがあります。現代のマネジメント実務の定番が、いくつもこの本を源流にしているからです。

  • 1on1ミーティング部下と定期的に1対1で話す場を、マネジャーのテコ作用が最も大きい活動の一つとして体系化しました。今のIT企業で当たり前になった1on1文化の源流として、本書は繰り返し参照されています。
  • 会議の2分類会議を「情報共有・プロセス中心のもの」と「意思決定のためのもの」に分け、それぞれ設計を変えるという整理。ダラダラ会議への処方箋として、そのまま今日の会議改革に使える枠組みです。
  • OKRの源流グローブがインテルで運用した目標管理(MBOの発展形)は、後にジョン・ドーアが広めたOKRの原型とされています。OKRを導入している職場なら、その設計思想の原典を読むことになります。
  • タスク関連成熟度部下の習熟度に応じて関与の濃さを変えるという考え方。マイクロマネジメントか放任かの二択を抜け出す基準として、今も通用します。

要するに、現代のマネジメント研修で教わる内容のかなりの部分が、この本の再編集です。原典を一冊読むか、断片を後追いで集めるか。その選択だと考えると、40年前という刊行年の意味が変わって見えます。

「古い」と感じる部分|朝食工場と80年代の前提

一方で、時代を感じる部分があるのも事実です。公平に挙げておきます。

  • 朝食工場の比喩本書の序盤は「3分ゆで卵とトーストとコーヒーの朝食を大量に提供する工場」を例にマネジメントの原理を説明します。製造業の比喩が続くため、知識労働中心の読者には遠回りに感じられることがあります。
  • 80年代インテルの企業文化事例や語り口は当時のインテルが前提。リモートワークもチャットツールもない時代の記述は、そのままでは使えず一段の抽象化が必要です。
  • 翻訳の硬さレビューで最も目立つハードルは古さより文体です。「翻訳が下手なのか頭にスッと入らない」という声のとおり、訳文は現代のビジネス書より硬め。ここは次の節で対処します。

ただし注意したいのは、古びているのが比喩と事例であって、原理ではないこと。朝食工場の例えが古くても、そこで説明される律速工程の考え方自体は今のプロジェクト管理と同じです。

翻訳の硬さで挫折しない読み方|実務直結の章から入る

レビューには「章によって当たり外れがある」「どの章から読むべきか迷う」という声もあります。挫折を防ぐ現実的な読み方は、通読をやめることです。

  • 実務直結の章から入る読者レビューでも、最初から通読するより1on1・会議・人事評価といった実務に直結する章から読む方法が繰り返し勧められています。今の自分の困りごとに効く章から入れば、硬い訳文を我慢する理由が生まれます。
  • 序盤の工場パートは飛ばしてよい朝食工場の比喩や計算のパートで止まりそうなら、後回しで構いません。テコ作用の考え方さえつかめば、本書の後半は独立して読めます。
  • 検索できる形式で読む辞書型の使い方をする本なので、ハイライトと検索が効く電子版と相性がよい一冊です。筆者もKindle版で所持しています。

HARD THINGSとのつながり|序文を書いたベン・ホロウィッツ

現行版の日本語版には、『HARD THINGS』の著者ベン・ホロウィッツが序文を寄せています。シリコンバレーの著名投資家である彼が、自身の経営の教科書としてこの40年前の本を挙げている構図です。1983年の本が2010年代以降に再評価された流れを象徴する組み合わせと言えます。

読み継ぎ方としても、この2冊は続きものになっています。HARD THINGSが「事業が壊れかけたときの修羅場のリアル」を扱うのに対し、HIGH OUTPUT MANAGEMENTは「平時の組織を高出力で回す技術」の本。危機の本と平時の本、どちらが今の自分に必要かで読む順番を決められます。

関連記事: HARD THINGSはどんな本?経営者以外が読んで意味があるか

結論と買い方|向く人・向かない人

結論。HIGH OUTPUT MANAGEMENTは「古い本」ではなく、「現代のマネジメントの共通言語の原典」です。古びたのは朝食工場の比喩と80年代の事例で、1on1・会議設計・目標管理・権限委譲の原理は現役どころか、今の定番そのものでした。

  • 向いている人はじめて部下やチームを持った人、1on1やOKRを「なぜやるのか」から理解したい人、マネジメントを場当たりでなく体系で身につけたい人。
  • 向いていない人今日の1on1で使える台本だけがほしい人。その場合は現代の実務書から入り、設計思想が気になったときにこの原典へ戻る順番で十分です。

購入の実例をひとつ。筆者はKindle版を2019年12月に購入しました。購入当時の価格は1,710円。日経BPの本はKindleセールの対象になることがあるため、急がないならセールを待つ選択もあります(価格は時期により変わります)。

関連記事: 経営の名著はKindleセールで安く揃う|実際の購入価格を公開

40年前の本を読む理由は、懐古ではありません。今使っている道具の設計図が、そこに書いてあるからです。

HIGH OUTPUT MANAGEMENT 表紙

『HIGH OUTPUT MANAGEMENT 人を育て、成果を最大にするマネジメント』

アンドリュー・S・グローブ/日経BP

Amazonで見る(Kindle版)

関連記事

コメント

このブログの人気の投稿

電子書籍のセール・クーポンが多いアプリ徹底比較|お得に買う3選

経営・ビジネスの名著おすすめ|実蔵書から選ぶ入門ガイド

オーディオブック比較|Audibleとaudiobook.jpの違いと選び方