世界標準の経営理論はどんな本?800ページの使い方

厚さにめげる——。
『世界標準の経営理論』のレビューには、この一言がたびたび登場します。経営理論を体系的に学びたくて評判のこの本にたどり着いたのに、800ページ超という数字を見て、買って持て余さないか不安になる。「どこから読むのか」「そもそも通読できるのか」。その迷い、実は本の使い方を知れば解消します。

結論を先に言うと、この本は最初のページから読み通す本ではありません。仕事で悩んだときに該当する理論を「引く」、経営理論の辞書です。この記事では、6部32章の見取り図と目的別の入口、そして買う前に知っておくべき「向かない人」まで、購入判断に必要な情報をまとめます。筆者は2020年1月からKindle版を手元に置いています。

PR:本記事はプロモーションを含みます。

世界標準の経営理論 表紙

『世界標準の経営理論』

入山章栄/ダイヤモンド社

Amazonで見る(Kindle版)

結論: 通読する本ではなく、悩んだときに引く辞書

この本の正しい期待値を、最初に1行で。

『世界標準の経営理論』は、読破を目指す本ではなく、手元に置いて必要な理論を引く本です。読者レビューでも「辞書」「辞典」という言葉が繰り返し使われ、「困った時に読み返すために側に置く本」という位置づけが定着しています。目次や索引から、いまの課題に効く章だけを拾い読みする。この使い方に切り替えた瞬間、800ページ超は「重荷」から「収録範囲の広さ」に変わります。

だから「通読できる自信がないから買わない」という判断は、少しもったいない。判断基準は「読み切れるか」ではなく「引きたい場面が仕事にあるか」です。次の節から、その中身を見ていきます。

どんな本か: 6部32章・800ページ超の経営理論の見取り図

世界標準の経営理論 表紙

書誌情報を整理します。著者は経営学者の入山章栄氏(早稲田大学ビジネススクール教授)。2019年12月にダイヤモンド社から刊行された、800ページ超の大冊です。世界の経営学で「標準」とされる約30の経営理論を32の章に整理し、1冊で見渡せるようにした本で、刊行から数年を経ても新版は出ておらず、これが現行版になります。

特徴は、個別の経営手法やフレームワークの紹介ではなく、その土台にある「理論」を、経済学・心理学・社会学という学問のディシプリンから体系化していること。1つの章が1つの理論に対応しているため、どの章からでも読み始められる構造です。この「章の独立性」が、辞書的な使い方を可能にしています。

「厚さにめげる」が最多の声: レビューから見る評価の実像

読者レビューの語彙を、肯定・否定の両面から並べてみます。

肯定側の語彙戸惑い側の語彙
「辞書」「辞典」「体系的」「網羅的」「分厚い」「重い」「厚さにめげる」
「分厚いが価値がある」「納得度が高い」「どこから読む」「通読しづらい」
「本棚に置き続けたい」「読み返す本」「大著すぎる」

面白いのは、肯定と戸惑いが同じ事実を指していること。どちらも「800ページ超で網羅的」という同じ性質を、使い方を知っているかどうかで逆の評価にしています。戸惑い側の声は本の欠点というより、「通読する本だ」という期待値のまま手に取った結果と読むのが実像に近いでしょう。

800ページの使い方: 目的別にどこから引くか

では実際にどう引くか。読者・紹介記事で推奨されている使い方は「仕事上の悩み→該当理論の章を引く→実務に当てる」という手順です。イメージが湧くように、よくある悩みと引き先の例を挙げます。

  • 競合との戦い方に悩んでいる経済学ベースの部から。競争や取引の構造を扱う理論群が、価格競争から抜け出す視点をくれます。
  • 部下のやる気・チームの空気に悩んでいる心理学ベースの部から。人と組織の認知や動機づけを扱う理論群が該当します。
  • 社内外の人脈・情報の流れに悩んでいる社会学ベースの部から。つながりの構造を扱う理論群が、組織の壁を越える手がかりになります。
  • 最初の1章を試したい目次を開いて、いま一番困っている単語(イノベーション、モチベーション、など)に近い章から。章が独立しているので、途中から読んでも迷子になりません。

Kindle版なら検索と目次ジャンプで「引く」動作がさらに軽くなります。筆者がKindle版を選んで購入したのは2020年1月(購入当時2,349円。価格は時期により変わります)。物理的な厚さと置き場所の問題を回避できるのは、この本に関しては実利が大きいと感じています。

著者・入山章栄と組織の名著たち: この本が地図になる理由

この本をおすすめする理由がもう1つ。個別の経営名著を読むときの「地図」になることです。

著者の入山章栄氏は、両利きの経営(探索と深化)の理論を日本に紹介してきた経営学者で、オライリー&タッシュマン『両利きの経営』増補改訂版では監訳・解説を務めています。つまり本書で理論の見取り図を持っておくと、『ティール組織』『学習する組織』『両利きの経営』のような個別の名著が、地図のどこに位置するのかを掴んだうえで読めるわけです。名著を単発で読んで「良い話だった」で終わらせないための、ハブになる1冊。

両利きの経営まわりの本選びは、こちらで詳しく整理しています。

関連記事: 両利きの経営を学ぶ本はどっち?本家と実践編の使い分け

向かない人・買う前の注意

誠実に、向かない人にも触れておきます。

  • 明日使える具体的なノウハウを探している人本書は理論の本であり、手順書ではありません。会議術や資料術のような即効性を求めるなら、別の本が先です。
  • 1冊を最初から最後まで読み通したい人通読には相応の時間と体力が要ります。「読破の達成感」を目的にすると、レビューの「厚さにめげる」側に回る可能性が高いでしょう。
  • 要約だけで済ませたい人要約記事で32理論の名前を眺めても、実務で「引ける」ようにはなりません。この本の価値は、悩んだときに戻ってこられる手元の厚みにあります。

逆に言えば、チームや事業を任されて「自分の判断に理論の裏付けが欲しい」と感じ始めた人には、長く使える投資になる本です。経営の名著をこれから順に読んでいく人の最初の地図としても機能します。

関連記事: 経営・ビジネスの名著おすすめ|実蔵書から選ぶ入門ガイド

まとめ

『世界標準の経営理論』は、800ページ超という数字だけを見ると腰が引ける本。でも正体は、通読を求めない「経営理論の辞書」です。6部32章のどこからでも読め、仕事の悩みから該当する理論を引く使い方が本来の姿。買う前の判断基準は「読み切れるか」ではなく「引きたい場面があるか」でした。理論の地図を1枚手に入れて、個別の名著をもっと立体的に読む——そんな読書の起点になる1冊です。

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