愛するということは難しい?「愛は技術」から読み始める

『愛するということ』。書名に惹かれて手に取りかけて、著者の肩書で手が止まる。
エーリッヒ・フロム——社会心理学者にして精神分析の思想家。急に「哲学書では」という警戒が立ち上がり、自分に読めるのか不安になる。この本の入口では、それがいちばん多いつまずき方です。

先に、この本の前提をひとつだけ渡します。フロムはこの本で「愛は技術である」と言い切ります。生まれつきの感情でも、運命の出会いでもなく、学んで練習するもの。この前提さえ持って開けば、この本は難解な哲学書ではなく「技術の教科書」として読めます。この記事では、その読み方を案内します。内容の要約や解釈の押しつけはしません。

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愛するということ 表紙

『愛するということ』

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結論: 「愛は技術」という前提だけ持って開く

この本の主張の入口はシンプルです。技術であるなら、学べる。学べるなら、練習できる。フロムは恋愛の駆け引きを教えるのではなく、「愛する能力」そのものを技術として鍛える道筋を論じます。

この前提が分かっていると、読書の構えが変わります。「深遠な思想を理解しなければ」ではなく、「技術の教科書として、使えるところを持ち帰る」。哲学書としてではなく実技の本として読む。これが挫折しない読み方の核心です。

どんな本かをひとことで

愛するということ 表紙

1956年に出て、70年近く読み継がれている本です。恋愛テクニックの本ではありません。かといって、専門用語の砦のような哲学書でもない。愛を「落ちるもの」と考える常識に対して、「技術として身につけるもの」と提案し、その練習に必要なもの(規律・集中・忍耐など)を論じていく——構造としてはそれだけの、まっすぐな本です。

恋愛に限らず、家族・友人・自分自身との関係まで射程に入っているので、恋愛の悩みがない人にも読む理由があります。むしろ「人との距離感にずっと悩んでいる」人にこそ選ばれてきた種類の本です。

難しく感じる場所と飛ばし方

正直に言うと、詰まりやすい場所はあります。前半の理論パートです。愛の類型や社会構造の分析など、抽象度が上がる章があり、ここで「やっぱり哲学書だ」と閉じる人が出ます。

対策はシンプルで、詰まったら実践の章へ飛んでいい。この本の終盤には「愛の習練」を扱う実践パートがあり、そこから読んで前半に戻る読み方でも成立します。教科書を最初のページから律儀に読む必要がないのと同じです。

「読みやすい」という評判は本当か

読者の間では「フロムの文章は読みやすい」という評価が定着しています。実際、翻訳も文章も、哲学書としては異例なほど平明です。ただし「読みやすい=軽い」ではありません。1ページで数日考え込むような一文が、平明な顔をして置いてある。それがこの本の読み味です。

だからスピードを求めないでください。読みやすいのにゆっくりしか進まない。それはあなたの読解力の問題ではなく、多くの読者が通る、この本らしい進み方です。

読み方の工夫: 1日1節・線を引く・耳で聴く

  • 1日1節でいい薄い本なので数日で読めますが、急ぐ理由がない本です。1日1節、考えながら進む読み方が合います。
  • 線を引く前提で読む刺さる一文が多い本です。Kindleのハイライトを使うと、読み返しが「自分用の名言集」になります。
  • 耳で聴き直す一度目を通した本を朗読で聴き直すと、読み飛ばしていた一文が立ち上がってきます。内省系の本と朗読は好相性です。
    関連記事: オーディオブック比較|Audibleとaudiobook.jpの違いと選び方

筆者は2022年4月に購入当時1100円で電子版を入手しました(価格は時期により変わります)。

読み終えたら、内省の古典へ

フロムで「自分の内側と向き合う読書」の手応えを掴んだら、2000年前の内省の古典・自省録が次の1冊です。こちらもまた、構えなくていい読み方があります。

関連記事: 自省録はどこから読んでもいい|2000年前の内省ノート

まとめ|哲学書ではなく、技術の教科書として

  • 前提は「愛は技術である」学べて練習できるもの、として読む。それだけで構えが消えます。
  • 詰まったら実践パートへ前半の理論で止まる必要はありません。教科書は好きな章から。
  • ゆっくりが正解読みやすいのに進まないのは、この本らしい進み方。1日1節で。

70年前の「技術の教科書」は、今も現役です。練習は、開いた日から始まります。

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