ティール組織は理想論?500ページで挫折しない読み方

「理想論で、うちの会社では無理」。
『ティール組織』のレビューには、この種の声が繰り返し出てきます。上司がいない自主経営、メンバーが仮面を外して働く全体性。話題の組織論として勧められて調べてみたら、絶賛と「難解で挫折した」が同居していて、500ページ超という分厚さも目に入る。買うべきか、迷って当然の本です。
この記事では、「理想論」という批判がなぜ出るのかを賛否両方の声から整理し、そのうえで挫折しない読み方を提案します。結論を先に言うと、この本はハウツー本として読むと高い確率でつまずき、事例集・思想書として読むと評価が変わります。期待値の設定がすべてです。
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目次
「理想論」と言われる理由|賛否両方の声
まず、実際の声を並べます。本書への評価は、はっきり二手に分かれています。
| 肯定側の声 | 否定側の声 |
|---|---|
| 「衝撃的だった」「これからの時代のバイブル」 | 「内容が難しすぎる」「難解で挫折した」 |
| 「分厚い本ですが、予想していたよりも読みやすかった」 | 「理想論で、うちの会社では無理」「非現実的だ」 |
| 画期的な組織論との書評多数 | 「結局どうすればいいか分からない」 |
興味深いのは、「非現実的だ」「自分の会社では無理」という声を、版元の英治出版自身が公式に紹介していることです。つまり批判は織り込み済み。組織論の研究者からは「事例はとてもおもしろいのだけど、どこか既視感がある議論」という冷静な指摘もあります。絶賛だけの本ではなく、賛否の幅ごと受け止められてきた本。まずこの前提を知っておくと、レビューの荒れ方に驚かずに済みます。
ティール組織はどんな本か|色分けモデルと3つの要素
『ティール組織』は、フレデリック・ラルーが2018年に日本で刊行した組織論の大著です(英治出版・500ページ超)。骨格は2つ。ひとつは、組織の在り方を発達段階として色で捉えるモデル。力で支配するレッドから始まり、階層と規律の組織、成果主義の組織などを経て、最も進化した形として「ティール(青緑)」が置かれます。
もうひとつが、ティール組織に共通する3つの要素です。
- 自主経営(セルフマネジメント)上司の指示ではなく、メンバーそれぞれが自主的に判断して動く仕組み。
- 全体性(ホールネス)職場用の仮面をかぶらず、その人まるごとで働けること。
- 存在目的(エボリューショナリー・パーパス)組織を、固定した計画ではなく進化し続ける目的を持つ生き物として扱うこと。
世界の実在組織の事例を集め、この3要素がどう機能しているかを描いていく。それが本書の中身です。
難しさの正体|ハウツーを期待すると挫折する
では、なぜ「難解で挫折した」という声が出るのか。ある読者が秀逸な比喩を残しています。「野球の勝ち方を探していたら、いつの間にかサッカーの話になっていて、『これからはサッカーの時代だ』と言われた気分」。
これが難しさの正体です。本書は、今の組織をうまく回すコツ(野球の勝ち方)を教える本ではありません。組織というゲームのルール自体が変わりうる、という別のパラダイムの話をしている。だから「明日から何をすればいいか」を探しながら読むと、「結局どうすればいいか分からない」という感想に着地します。「日本語訳がおかしいのでは、と感じるほど頭に入ってこない」という声も、訳の問題というより、前提がまるごと違う話を既存の枠組みで読もうとした時の症状と解釈できます。
同じ英治出版の組織論の大著『学習する組織』にも、抽象度の高さで挫折者が出る共通点があります。あちらの挫折対策は別記事にまとめました。
関連記事: 学習する組織は難しい?マンガ版から入る2段読みのすすめ
挫折しない読み方|地図を持って事例集として読む
読者コミュニティで実際に勧められている読み方は、大きく3つあります。
- 先に要約で全体像を掴む「まずネットで『ティール組織 要約』を検索し、全体像を掴んでから本書に挑むと理解度が格段に上がる」という読者の提案があります。色のモデルと3要素という地図を持ってから登る方式です。
- すぐに理解しようとしない「こういう組織が世界には実在するんだな」と、物語を読むように受け入れる。ハウツーの答え合わせをやめた瞬間に、事例のおもしろさが立ち上がってきます。
- 自社に当てはめるのは読了後でいい「うちの会社では無理」は多くの場合正しい感想です。本書は移行マニュアルではなく、視野を広げる思想書・事例集。適用の判断は、読み終えてからで間に合います。
刊行から8年経った今は、流行語として消費される段階が終わり、賛否の落ち着いた本として距離を取って読める時期でもあります。ブームの渦中より、むしろ今のほうが冷静に付き合える一冊です。
購入の実例と揃え方
筆者はKindle版を2020年10月に購入しました。購入当時の価格は1,250円。500ページ超の大著としてはかなり抑えた価格で手に入れています(価格は時期により変わります)。英治出版のような専門書系も含め、ビジネス書の大著はKindleセールの対象になることがあるため、急がないならセールを待つ選択も現実的です。セールの傾向は別記事にまとめています。
関連記事: 経営の名著はKindleセールで安く揃う|実際の購入価格を公開
まとめ|向いている人・向いていない人
『ティール組織』は理想論か。答えは、読み方次第です。移行マニュアルとして読めば理想論に見え、実在する組織の事例集・思想書として読めば、組織観を広げる強い一冊になります。批判は版元も織り込み済みで、賛否の幅ごと楽しむのが正しい付き合い方です。
- 向いている人今の組織運営に構造的な違和感があり、別のパラダイムを一度見ておきたい人。時間をかけて思想書と向き合える人。
- 向いていない人明日のマネジメントに使える具体策を探している人。その場合は組織論の実務書から入り、視野を広げたくなったときにこの本へ戻る順番で十分です。
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