歴史とは何かは難しい?詰まる章の流し方と新版・旧版の選び方

「歴史とは現在と過去との対話である」。
どこかで一度は聞いたことがあるはずのこの言葉の出どころが、E.H.カー『歴史とは何か』です。歴史好きが最後にたどり着く名著と言われますが、岩波新書・60年前の講義・イギリスの歴史家、と属性を並べると腰が引けるのも無理はない。「読みたいが難しそう」で止まっている定番の1冊です。

この記事では、有名なあの一句を道しるべにした気楽な読み方と、詰まりやすい場所の流し方、そして旧版と新訳版の整理までを案内します。歴史理論の解説はしません。

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歴史とは何か 表紙

『歴史とは何か』

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結論: あの一句を道しるべに、講義として聴く

この本の核は、冒頭に掲げた一句に集約されています。歴史とは、過去の事実が石のように転がっているものではなく、現在を生きる歴史家が過去に問いかける「対話」だ——本書全体が、この一句の意味をいろいろな角度から確かめていく連続講義です。

だから読み方の構えはこうなります。全部を理解しようとせず、「対話」という一句が腑に落ちる瞬間を待ちながら聴講する。もとが大学での連続講演なので、文体は語りかけです。理論書の顔をした、講義録。それがこの本の実体です。

どんな本か

歴史とは何か 表紙

1961年、歴史家E.H.カーがケンブリッジ大学で行った連続講演をまとめた一冊です。歴史の事実とは何か、歴史家は何をしているのか、歴史に法則はあるのか——「歴史そのもの」を問う本として、以来60年、歴史学の入口に置かれ続けています。

面白いのは、この本自体が読者を選ばないことです。専門家向けの技術書ではなく、歴史好きの一般読者に「あなたが読んでいる歴史とは何なのか」を考えさせる本。昭和史や歴史小説を楽しんできた人ほど、刺さる位置にいます。

難しく感じる場所と流し方

  • 歴史家の固有名詞ランケ、トレヴェリアン——英国の歴史家の名前が例として頻出します。全員知らなくて問題ありません。「昔の偉い歴史家」と読み流して、論の流れだけ追ってください。
  • 哲学寄りの章因果や客観性を扱う章は抽象度が上がります。ここで止まるくらいなら、章ごと飛ばして先へ。講義は各回で仕切り直されるので、飛ばしても崩れません。
  • 60年前という時代冷戦期の視点で書かれた本であることは、頭の隅に置いて読むと混乱しません。それ自体が「歴史家も時代の子」という本書の主張の実例になっています。

旧版と新訳版、どちらで読むか

岩波の『歴史とは何か』には、長く読まれてきた旧訳(清水幾多郎訳・筆者所持はこちら)と、2022年に出た新版(新訳)があります。考え方はシンプルです。訳文の読みやすさを最優先するなら新版、長く引用されてきた定番の言い回しで読むなら旧版。どちらで読んでも本の価値は同じです。

筆者は2020年11月に旧版の電子版を購入当時860円で入手しました(価格は時期により変わります)。すでに旧版を持っている人が新版に買い直す必要は、入門の段階ではありません。

昭和史とセットで効く

この本の効き目が最大になるのは、具体的な歴史の本と組み合わせたときです。たとえば半藤一利の昭和史3冊で「何が起きたか」を読み、カーで「その記述は誰がどう書いたものか」という視点を得る。事実の書と見方の書。この2枚重ねで、歴史の読書は一段深くなります。

関連記事: 半藤一利の昭和史は3冊ある|読む順番と関係を整理する

安く買う・次へ

岩波新書の電子版はセールの対象になることがあります。新旧2つの版がある本なので、購入前に価格と版を確認する一手間だけかけてください。

関連記事: 電子書籍のセール・クーポンが多いアプリ徹底比較|お得に買う3選

「考える読書」の登り方全体は、哲学ロードマップと歴史の入門ガイドが受け皿です。

関連記事: 歴史・時代小説の名著おすすめ|実蔵書で組む入門ガイド

まとめ|歴史の本の「読み方」が変わる一冊

  • 講義録として聴く理論書の顔をした語りの本。あの一句を道しるべに。
  • 人名は流す・章は飛ばせる連続講義なので、部分読みでも崩れません。
  • 事実の書とセットで昭和史と2枚重ねにすると、歴史の読書が一段深くなります。

現在と過去との対話は、この新書1冊から始められます。

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