暇と退屈の倫理学は難しい?現代の名著を挫折せずに読む
休日、時間はあったはずなのに、スマホを眺めて終わった。暇だったのに、退屈だった。
この奇妙な感覚に名前を付けて正面から考えたのが、國分功一郎『暇と退屈の倫理学』です。SNSで話題になり、新潮文庫版で手に取りやすくなった現代の名著。ただ、「倫理学」という書名と分厚さで、レジ前で迷っている人も多いはずです。
先に安心材料をひとつ。この本は現代の日本語で書かれた哲学書です。つまり、哲学入門の最大の壁である「翻訳の壁」が存在しない。この記事では、それでも詰まりやすい場所と歩き方を案内します。結論の解説はしません。あの結論は、自分でたどり着いてこその本です。
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目次
結論: 翻訳の壁がない哲学書。構えは要らない
哲学書で挫折する原因の大半は、思想の難しさではなく翻訳文の硬さです。この本にはそれがない。現役の日本の哲学者が、現代の読者に向けて、現代の言葉で書いている。文章は明晰で、ユーモアがあるとも広く評されています。
だから必要な構えはひとつだけ。「読み切らなければ」ではなく「この問いに付き合ってみよう」。問いは次の節のとおり、あなたの先週の休日の話です。
この本の問い: 暇なのに退屈なのはなぜか
暇は、時間が余っていること。退屈は、その時間をどうしていいか分からない苦しさ。私たちは暇を求めて働くのに、いざ暇を手にすると退屈に苦しみ、気晴らしに時間を流し込んでまた月曜日を迎えます。スマホのスクロールで終わった休日は、まさにこの構図の現代版です。
なぜ人間はこうなのか。どうすればいいのか。本書はこの問いを、哲学・経済史・生物学まで動員して考え抜きます。問い自体が自分事である読者にとって、「先が知りたくなる」哲学書として読まれ続けているのも頷けます。
難しく感じる場所: 哲学史をたどる中盤
正直な注意点です。本書の中盤には、過去の哲学者たちの退屈論・世界論をたどっていくパートがあり、人名と概念の密度が上がります。ここが本書の峠で、「急に大学の講義になった」と感じて止まる人が出ます。
心得は2つ。人名を全部覚えなくていい(議論の流れが掴めれば十分)。そしてこの峠は結論のための助走だと知っておくこと。著者は結論を言うために、先人の考えをひとつずつ検討して潰していきます。遠回りに見える中盤は、結論の説得力の仕込みです。
止まったら、順番に縛られない
それでも峠で止まったら、順番に縛られるのをやめましょう。結論の章を先に覗いてから中盤へ戻る読み方でも、この本は成立します。結論を知ると中盤の検討の意味が分かり、「なぜこの哲学者を検討するのか」が見えて歩きやすくなる。ミステリーと違って、哲学書は結末を知っても価値が減りません。むしろ2周目こそ本番の書物です。
筆者は2022年7月に新潮文庫版を購入当時720円で入手しました(価格は時期により変わります)。文庫で持ち歩ける哲学書、という物理的な気軽さも、この本の入口の低さです。
現代日本語の哲学書という入口の価値
この本を入口に置く価値は、「哲学書を1冊読み切った」という実績が作れることです。翻訳古典から始めて挫折すると「哲学は無理」という誤診が残りますが、実際に高かったのは翻訳の壁だけ、ということが多い。
現代日本語の哲学書で思考の体力をつけてから、翻訳古典へ。この順番なら、自省録も君主論も、ずっと登りやすくなります。
哲学に慣れる・次へ
哲学系の新書・入門書は読み放題サービスの対象になっているものも多く、乱読で「哲学の文体」に慣れるのは有効な準備運動です。
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この本のあとの1冊は、内省の古典・自省録か、哲学全体のロードマップからどうぞ。
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まとめ|先週の休日の謎を、哲学で解く
- 翻訳の壁がない哲学書現代日本語で明晰。哲学入門の1冊目に置ける稀有な本です。
- 峠は中盤の哲学史パート人名は流してよし。止まったら結論から戻る読み方も成立します。
- ここから翻訳古典へ思考の体力をつけてから自省録・君主論へ。登る順番が大事です。
スマホで消えた休日に、名前と理由があった。それを知る読書から、始めてみてください。

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